学級崩壊にとどまらず「学校崩壊」はなぜ起こるのか、年度始めの対策は? 「1人の教員」を発端に学校全体へ波及する実態
また、病休・産休の代替教員が見つからない場合や、1つの学級が崩壊して支援を必要とする状況になった場合に、そこへサポートに入る教員が自身の学級の児童のことに手が回らなくなり、新たな学級崩壊を招くこともあるそうだ。
そのほか、学級内で問題行動を取る児童に担任が過剰に対応することで、それ以外の児童が置き去りにされて不満が表出することもある。教員が児童を叱る声を別の児童が怖いと感じて不登校になり、その保護者の対応などでいっぱいいっぱいになって学級経営がうまくいかなくなるケースも見られるという。
「学級崩壊の原因は多様ですが、以前より頻繁に起きるようになったことで学校崩壊にまで発展してしまうケースが珍しくなくなっています。そもそも中学校に比べて小学校の教員配置は少ないため、学級崩壊が続けば教員たちの余裕はなくなり不協和音も生まれやすく、一気に学校崩壊へと進むこともあります。さらに、働き方改革やコロナ禍を理由に行事の削減を進めたことで保護者や地域の人々との信頼関係が希薄になっていると、支援が必要な際に理解や協力が得られず学校崩壊に向かうこともあるのが実態です」
小学校での学級崩壊は、「以前は5・6年生が中心だったものの、最近は1年生の時点から起こることもあり、低年齢化が進んでいる」と庄子氏は指摘する。その背景としては、保護者の価値観の多様化や、幼稚園・保育園からの環境変化への適応の難しさが考えられるという。
「以前は、『先生の言うことだから聞きなさい』と子どもに伝える保護者が多かったのに対し、現在は『学校でも子どもの個性ややりたいことを尊重すべきだ』と考える人が増えてきています。学校のやり方に疑問を持って過剰な介入をする保護者がいることも、教員の指示が子どもに伝わりにくくなっている一因かもしれません。また、立ち歩きが多いことに関しては、特別な支援が必要な子が増えている背景もありますが、主体的な活動を重視する幼稚園・保育園の増加もあり、『授業中は座っていなければならない』という感覚の薄い子どもも増えているように見受けられます」
「適材適所の人材配置」と「教員間の連携」が重要
学校崩壊を防ぐために重要なこととして、庄子氏が挙げるのが「適材適所の人材配置」だ。
「課題のある教員を誰と組ませるか、辞めそうな教員はいないか、初任者へのサポート体制をどうするかといった管理職の判断が非常に重要になります。また、学校崩壊が起きたとしても、教員同士の仲がよく協力できる体制が組めていれば耐えられることも多いので、教員が雑談のできるスペースを職員室に設けるなどして、教員間の連携を強化していく必要もあるでしょう」
業務分担では特定の教員に仕事を集中させない配慮が求められるが、キャパシティーに余裕がない教員にも平等に仕事を割り振ってしまうと学級経営に手が回らなくなって学級崩壊を招きやすくなるため、「“平等”にこだわりすぎない柔軟さも大切です」と庄子氏は言う。また、現在進行形で崩壊状態にある学校にはこう助言する。
「公立学校は次年度の人事において、学級崩壊や学校崩壊を起こしている学校には適切な人材の補填ができるように配慮がなされることが多いため、年度が切り替われば新たな人材も含めて人事配置を立て直すことが可能になります。とくに小学校は学級担任制なので、クラス替えをして担任が変われば学校全体が落ち着くことが多く、学校崩壊が起きた場合は『まずは年度末まで耐える』ことを目標として、次年度に向けて意識を切り替えていくとよいでしょう」