与党大敗ドイツの「日本化」が止まらない真の原因 "技術大国"の落日から日本は何を学ぶべきか

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そんな中、ヴァンス副大統領の欧州批判は「本気で言論の自由と民主主義を守るつもりがないなら、アメリカは欧州を支援しない」という圧力を加えている。裏を返せば、何でもありのリベラリズムに陥った欧州は目を覚まし、キリスト教的価値観を復活させ、ロシアと本気で対峙すべきというメッセージでもあった。

つまり、世界の超大国アメリカの圧力を受けた欧州の選択肢は、現状維持か、いいか悪いかは別にして民主主義の価値観への回帰か、という選択肢しかない。フリードリヒ・メルツ新首相は今回、アメリカ依存からの脱却を主張しているが、それが何を目指すのかは曖昧なままだ。

その点で、日本は自ら勝ち取った主義ではないが、民主主義を大切に育ててきたという意味では、同じ圧力に晒されている。仮にウクライナに妥協を強いる停戦合意であったとしても、停戦が保証されれば戦争は終わる。結果、ドナルド・トランプ大統領への信頼度は上がる。

フランスのマクロン大統領、イギリスのキア・スターマー首相のホワイトハウス訪問を前に、トランプ大統領は2月21日、2人の首脳について、ウクライナでの戦争終結のために「何もしていない」と批判した。

欧州に30年以上関わってきた筆者は、欧州、とくにバルト3国とポーランドを除く国々の「平和ボケ」は日本と変わらないと感じている。中でもドイツは、何かあれば北大西洋条約機構(NATO)とアメリカが守ってくれるとの認識から、ウクライナ戦争に本気で対峙していない。

筆者が感じたドイツと日本に共通する難題

3年前、開戦直後に取材でドイツを訪ねたとき、隣国・ポーランドにウクライナ難民が押し寄せている最中でも、ドイツでは戦争と無関係な労働組合のデモが起きていた。当時、武器供与を拒んでいたドイツはウクライナにヘルメット5000個を供与し、世界からひんしゅくを買ったが、実はドイツ国内ではヘルメット供与でさえ反対する世論があった。

世界の危機感を共有できないのは、敗戦でアメリカ依存を強めた日本も同様だ。戦勝国の側に立つイギリスやフランスはウクライナへの派兵も辞さない構えだが、ドイツは強く否定している。ウクライナの要求する兵器を供与せず、派兵も否定するドイツは今、完全に孤立している。

はたして東西冷戦時にソ連と本格的に対峙しなかった日本とドイツは、「トランプ2.0」で何を迫られているのか、真剣に考える必要があろう。世界のどの国よりもアメリカ依存を続け、甘えの構造の中で「平和ボケ」に陥った日独両国は、真の意味で独立主権国家に脱皮することができなければ、経済大国の地位を失うかもしれない。

安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)

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あべ まさのぶ / Masanobu Abe

パリを拠点にする国際ジャーナリスト。取材国は30か国を超える。日本で編集者、記者を経て渡仏。創立時の仏レンヌ大学大学院日仏経営センター顧問・講師。レンヌ国際ビジネススクールの講師を長年務め、異文化理解を講じる。日産、NECなど日系200社以上でグローバル人材育成を担当。

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