与党大敗ドイツの「日本化」が止まらない真の原因 "技術大国"の落日から日本は何を学ぶべきか

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こうしたドイツの行き詰まりを顕著に示したのが、アメリカのJ・D・ヴァンス副大統領による2月の欧州歴訪だ。同副大統領は「欧州が言論の自由や移民問題で民主主義を損ねている」と厳しく批判し、欧州首脳に衝撃を与えた。

歴訪の最初に訪れたパリのAIアクションサミットでは、規制にばかり走る欧州を激しく批判。新しいテクノロジーが与える社会変革をチャンスと捉え、自由を尊重すべきだと主張した。背景には、欧州がアメリカ発のテック大企業に巨額の罰金を科すやり方を続けていることがあった。

ヴァンス副大統領の強い主張に対し、日頃は規制大好きのドイツ人、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長も、フランスのエマニュエル・マクロン大統領も「アメリカの欧州離れ」を警戒し、デジタル規制緩和を口にした。

欧州の弱みは、AIにせよ、デジタルテクノロジーにせよ、新しいプラットフォームを生み出せていないことだ。とくにドイツは日本と同様、手段が目的化しやすく、「規制や決まりを守れば安全」という考え方が強すぎて、新しい発想・アイデアが生まれにくい土壌がある。

こうした事情もあってか、今回のヴァンス旋風に最も反発したのはドイツだ。合意形成型の意思決定が主流のドイツでは、欧州やウクライナの頭越しに米ロ首脳会談で和平を実現するやり方に対しても不快でならない。しかし、ヴァンス副大統領は、3年を超えるウクライナ戦争を長期化させたのはバイデン前政権と欧州大国、とくにドイツの怠慢とみている。

結局のところ、欧州はロシアのウラジーミル・プーチン大統領が怖く、腰が引けている状態で、アメリカから見れば自由と民主主義を守るために明確なメッセージを出し惜しんでいたというしかない――。自由と民主主義の価値観を欧州が骨抜きにしているという、ヴァンス副大統領の本音が前面に出た格好だ。

「トランプ2.0」への対応を迫られる世界

第2次世界大戦の終結から80年が経とうとし、世界は大きな節目を迎えている。ドイツも日本も「敗戦国」としての負い目を持ち、ドイツは欧州周辺国に対して、日本はアジア周辺国に対して気を遣いながら80年を過ごしてきた。

戦勝国5カ国で構成する国連安全保障理事会は、ウクライナ戦争でもパレスチナ・イスラエル戦争でも機能せず、ドイツは人類の歴史上、最も多くの犠牲者を出した第2次大戦の独ソ戦のトラウマから解放されず、ウクライナ支援でも腰が引けている。

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