与党大敗ドイツの「日本化」が止まらない真の原因 "技術大国"の落日から日本は何を学ぶべきか

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政府は重大な犯罪歴のある難民の国外退去処分の迅速化などを打ち出したが、手ぬるい移民政策への批判が高まった。こうした中で、CDU/CSUは持続的な国境管理をはじめとした、より厳しい対策を主張。AfDも不法移民らの強制送還の徹底などを掲げ、支持を伸ばした。

右派躍進の背景は、これだけではない。高止まりするエネルギー価格への対応も、党勢の浮沈を左右した。

自動車製造業や工業機械など重厚長大産業の比率の高いドイツは、つねに大量の電力を必要としている。だが、ウクライナ戦争によって、これまで依存していたロシアからの天然ガスの供給がストップ。エネルギーコストの上昇が産業界にも市民生活にも悪影響を与えている。

そうした状況にもかかわらず、ドイツ政府は脱原発にこだわり、2023年に国内のすべての原子炉を停止。不足した分の電力を、原発より温暖化ガスを排出する石炭火力や、原発に大きく依存するフランスからの電力購入で賄ってきた。こうした中で、CDU/CSUは原発の再稼働を政策案に盛り込み、支持を得た。

ドイツ経済の苦境を表すデータの深刻さ

前回2021年の総選挙では直前の洪水被害の影響もあり、環境保護や気候変動への関心が高かった。一方、今回はたび重なる移民によるテロ事件で有権者の関心が難民・移民問題に移ったことに加えて、ドイツ経済がかつてない苦境にあることが選挙に暗い影を落とした。

ドイツ連邦統計局によれば、同国経済は1950年以降で2度目となる2年連続のマイナス成長(2023年は▲0.3%、2024年は▲0.2%)を記録した。経済の停滞は5年も続き、コロナ禍前の成長トレンドが維持された場合と比べて5%縮小している。

CDU/CSUは、2030年に向けて少なくとも2%の経済成長を目指すとし、個人に対する信頼を深め、国家による強制や過信を減らすと表明した。具体的には、大規模減税、半導体やバッテリーの生産への支援、貿易政策も取り扱う新たな国家安全保障戦略の策定、欧州連合(EU)と協力して自由貿易を推進し、輸出志向型の経済モデルを維持することなどを挙げている。

さらに、これまでドイツが課題としてきたイノベーションやデジタル化の推進において、研究開発の自由度を高めて資金調達に関する官僚主義の緩和などを行うための「イノベーション自由法」の策定、各種規制を大幅に免除する「スタートアップ保護ゾーン」の創設、人工知能(AI)を活用した効率的な行政サービス、データ活用の積極化なども打ち出した。

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