橋下市長が描いた「大阪都営地下鉄」の全貌 鉄道マニアには興味深すぎる路線構想

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現在、国交省と近畿運輸局は、次の答申案の検討に入っている。2015年度中に示されるはずだったが、大阪府庁と大阪市役所が都構想で身動き取れない今、まともな議論はできていない。

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関西国際空港のアクセス列車として運行している「はるか」(写真 : Daisuke Shibuya / PIXTA)

前回話題にした、なにわ筋線。実は、近畿運輸局の検討会が2011年に需要予測を算出している。新大阪~JR・南海難波間に6駅を設置して各駅列車と優等列車を複合運行する案だと、建設費3200億円、1日21万人利用、費用便益比1.31。北梅田~関西空港間は「はるか」で平均46分、「ラピートβ」で同47分。整備コストの削減、運賃の制度設計、既存線の改良の有無、停車駅の増減、他路線の整備状況の具合によっても、この数字は上下する。ただ、大阪市として、どのような案と建設スキームで取り組むのか。橋下市長は何も決めないまま地下鉄民営化条例案を提出し、大阪都構想の住民投票に突入してしまった。大阪の交通政策を描く大切なタイミングであったのに、見切り発車したのは残念だった。

結局橋下市長の功績は何だったのか

橋下知事、そして市長の8年間を総括するのは難しい。

大阪都構想の賛否ですら、彼の主張する政策の是非より、独特なキャラクターが好きか嫌いか、そちらに人々の関心は集まった。「大阪都さえ実現できれば」とのシンプルすぎる発言。それを否定する野党や反対派。極論ばかりが飛び交い、議論の幅は広がらなかった。教育や福祉、財政などほかの分野でも同じであろうが、トップである市長の思いつきを具体化し、熟成させていく過程が欠落していた。それでは市民や関係者と問題意識を共有できない。

2015年11月には大阪市長選と大阪府知事選のダブル選挙が実施される。どのような結果になっても、今後も、橋下徹という主人公を中心に地下鉄民営化や大阪都構想の議論は続くのだろう。次は駆け引きだけでなく、きちんと具体案を出しながら話を深めていってほしいと願うばかりだ。

森口 誠之 鉄道ライター

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1972年奈良県生まれ。大阪市立大学大学院経営学研究科前期博士課程修了。主な著書に『鉃道未成線を歩く(国鉄編)』『同(私鉄編)』など。

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