橋下市長が描いた「大阪都営地下鉄」の全貌 鉄道マニアには興味深すぎる路線構想

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さて、今里筋線計画のうち、今里~湯里六丁目間が未着工で残された。建設費約1314億円、2011年完成予定。大阪市議会は与野党とも延伸区間の着工に前向きだった。2005年の大阪市長選の際、当時の関市長が計画凍結を打ち出そうとするが、市議や対立候補からの批判を受け、曖昧にせざるをえなくなった。

「民営化されると今里筋線延伸は不可能」と市民に説明する野党議員に対して、橋下市長は「輸送効率が非常に悪い路線である」、「関空アクセスのなにわ筋線のほうが重要」と答弁する。あわせて、延伸の是非を検証すべく、外部委員会として大阪市鉄道ネットワーク審議会を設けて、2014年に諮問を受けている。

ネットワーク審議会は、大阪市条例で計画路線とされている4路線(今里筋線延伸、長堀鶴見緑地線延伸、千日前線延伸、敷津長吉線)を分析し、費用便益比、収支採算性、輸送密度の必要条件を満たせないと厳しい試算を出した。LRT、BRTなど「多様な公共交通システムの導入可能性も含め、幅広く検討する必要がある」と言及した。事実上のゼロ回答だ。

と、ここまでは、橋下市長なりの考えに基づいた理屈の通った話ではある。

しかし、2014年8月、大阪市交通局は、先の審議会で評価された4路線について「答申を踏まえ、本市としての考え方を明確にし、新会社はその考え方を最大限に尊重していく」と評した文書を公開する。なんとも曖昧な言葉だ。市長の思惑次第で、民営化後の地下鉄会社に建設を要請できるということか。

橋下市長は8月30日の記者会見で「『延伸しろ』と言ってきた市議会がいかに無責任だったかがわかった」と答えた後、このように付け加える。「ただ大阪都構想と地下鉄民営化が実現すれば、各特別区が、配分された地下鉄会社の株式を資金として延伸を決めることは、ありだ」と。

鉄道新線構想を大盤振る舞い

突然、橋下市長は方針転換を行った。今里筋線延伸の可能性を否定しないどころか、特別区も鉄軌道の計画を決める立場になったという。

これ以降、大阪維新の会は、大阪都広域、東、北、湾岸、中央、南の5つの特別区、そして堺市のマニフェストに十数件の鉄道新線構想を盛り込んでいる。

▽北大阪急行電鉄 千里中央~新箕面
▽地下鉄御堂筋線と泉北高速鉄道との相互乗り入れ
▽地下鉄四つ橋線 西梅田~十三~新大阪連絡線
▽地下鉄中央線 コスモスクエア~此花区夢洲(カジノ予定地)
▽地下鉄千日前線 南巽~JR平野駅
▽地下鉄今里筋線 岸辺駅・正雀駅・東部市場駅・天王寺駅・湯里6丁目への延伸
▽地下鉄長堀鶴見緑地線 大正~大正区役所前
▽JR桜島線  桜島~此花区夢洲
▽京阪中之島線 中之島~ユニバーサルシティ
▽大阪モノレール 門真市~瓜生堂
▽新型交通システム導入(BRTやLRTなど)
南港通、長居公園通、大正区役所前~鶴浜、天神橋筋6丁目~赤川~太子橋今市、天王寺~恵美須町~難波間
▽堺の東西交通、美原の鉄軌道の整備
次ページ大阪都で実現するはずだった「大阪都営地下鉄構想」
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