おとなのけんか --「政治と経済」と「本音と建前」《宿輪純一のシネマ経済学》
2006年の初演だが世界各地の公演で大好評を博している舞台劇(コメディ)の映画化である。まず気がつくのが、キャストや原作者、そして監督も超豪華ということだ。
フランス人の女性劇作家ヤスミナ・レザの原作で、レザは、演劇界でもたいへん高い権威のあるトニー賞とオリヴィエ賞とを受賞している。ちなみに演劇界のアカデミー賞といわれる「トニー賞」は、正式名称をアントワネット・ペリー賞という。トニーとはアントワネットの愛称だ。米国の演劇とミュージカルの賞で最も権威のあるもので、女優・演出家で米演劇界の功労者、アントワネット・ペリーの呼びかけで1947年から開始された。オリヴィエ賞は正式名称ローレンス・オリヴィエ賞といい、名優ローレンス・オリヴィエの名前が付されている。こちらは英国のトニー賞ともいわれるもの。
監督は、アカデミー賞受賞の名監督、ロマン・ポランスキー監督! 1933年生まれのポーランド人で、ナチの弾圧を受けた。63年に米国に渡り、『ローズマリーの赤ちゃん』『チャイナタウン』などの秀作を監督。暴行事件で有罪判決を受けたが、釈放中の78年にフランスに逃亡。その後『戦場のピアニスト』でアカデミー賞を受賞するも、米国内の受賞式には逮捕の可能があり、参加せず。
キャストも演技派ぞろい。『羊たちの沈黙』のジョディ・フォスターは2回のアカデミー主演女優賞受賞(最近、パニック系の映画が多いが)、『タイタニック』のイギリス人、ケイト・ウィンスレットは6度のアカデミー賞ノミネート、『イングロリアス・バスターズ』のオーストラリア人、クリストフ・ヴァルツはアカデミー助演男優賞受賞、かっこよくない米国人役がぴったりの名脇役、ジョン・C・ライリーはアカデミー賞ノミネート者となかなかに豪華。