さらに、財政投融資で独立行政法人などにお金を貸していて、貸出金から得る受取利息があると想起するかもしれない。
そもそも、財政投融資は、財投債という国債で資金を調達して、独立行政法人などにお金を貸している。通常は、調達側の国債は10年前後の満期で借りていて、貸出側は20~40年程度の長期固定金利で利ザヤなしで貸している。金利低下局面では、借りる国債の金利が低下する一方で、すでに貸している貸付金の金利の方が高いから、差益が出る。しかし、金利上昇局面では、その逆になる。
調達側の国債の金利が上がって直ちに費用が増加する一方で、貸出側は金利が固定されているから収益は増えない。いわゆる逆ザヤになってしまう。
財政投融資は、逆ザヤになって赤字が出ても直ちに国民に迷惑をかけないように、金利変動準備金を用意している。
ただ、「金利が上がれば受取利息も増えるから財政は悪化しない」という言説が間違っているということだけは確かである。
利払い費はすでに増加に転じている
おまけに、財政投融資は、国の特別会計で運営されているが、財政健全化目標の指標である国と地方のプライマリーバランス(基礎的財政収支)の対象外の会計である。だから、財政投融資で収支が改善しようがしまいが、国と地方のプライマリーバランスには何の関係もない。
だから、どう逆立ちしても、「金利が上がれば受取利息も増えるから財政は悪化しない」というのは間違いで、金利が上がった分、一般会計の利払い費が増え、税収が増えない限り、増えた分は政策経費を切り詰めないといけなくなる。
これまで利払い費はどんどん減っていて、当初予算で利払い費を多く見積もっては補正予算でそれを減らして財源として使っている、という批判がある。しかし、東洋経済オンラインの拙稿「『金利ある世界』で一つの『財政の神話』が終わった」でも触れたように、一般会計の利払い費はすでに2023年度決算から反転増加している。国債残高は増える一方であり、利払い費が今後さらに大きく減ることは見込めない。
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