「日本が羨ましい」中国で公務員に応募殺到のワケ 「起業ブーム」はどこへ…日本化する"中国の今"

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ところが、最近はまったく真逆の風潮が起きている。景気の悪化に伴い、どうにかして体制内の安定した職を得ようとする「上岸」(シャンアン)を目指している人が多数を占めるようになった。

公務員志望者の増加が何よりの証明だ。2024年の国家公務員試験の出願者は340万人。2021年に200万人を超えて話題となったが、あっという間に次の大台を突破した。合格枠は全体で3万9700人なので、倍率87倍という狭き門である。なお、中国の国家公務員試験はポストごとに募集がおこなわれるので、数千人が一つのポストに殺到することもある。

国家公務員以外でも、地方自治体職員や準公務員待遇の公共機関職員も同じく「体制内」(中国共産党の体制内部の意)と言われており、やはり競争が熾烈だ。日本の県にあたる省レベルの公務員試験の応募者は500万人を突破している。準公務員と呼ばれる第三セクター職員も競争が激しい。

公務員試験浪人も増えている。民間企業に勤めながらも公務員試験の勉強を続ける仮面浪人もいるが、さらに「公務員になる以外の道は断つ」とばかりに、実家で家事手伝いをしながら公務員試験浪人を続ける「全職児女(フルタイムの子ども)」なる言葉まで生まれている。

試験勉強だけではなく、日本風に言えば内申点稼ぎもがんばらなければならない。特に中国共産党党員になることは、公務員試験にかなり有利と言われる。入党には推薦を得たりレポートを執筆したりとかなり手間がかかるうえ、なったらなったで、勉強会やらボランティアのお誘いやらで時間がとられるが、それでも党員志望者は増えるばかりだ。

日本がうらやましい

「大衆創業、万衆創新」(大衆の創業、万民のイノベーション)が政府のキャッチコピーに掲げられたのは2015年のこと。ちょっとした創意工夫で誰でも起業できると宣伝された。

会社にしばられるよりも自由に生きたほうがいいという考えが主流で、年功序列で新人は雑用ばかりやらされる公務員(と日本企業)は敬遠されていたのだが、10年足らずで社会のムードが180度変わった。今では逆に「日本企業は定年まで解雇されないんでしょ?すばらしい」と讃えられる。

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