フジテレビ、売上高でついに4位に転落するか 三冠王を争ってきた日テレに突き放されたワケ

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一方、日本テレビに視聴率でも売り上げでもトップから追い落とされたフジテレビは、改編のたびに新しい番組を組んで視聴率奪回を図った。

ところが、あがけばあがくほど逆にはい上がれない底なし沼にはまっていた。視聴率が取れる番組を作ろうとはしても、日本テレビのようにどの層に見てもらうかの目標がなかった。本来は番組づくりの前にあるべき戦略がフジテレビにはなかったのだ。

いたずらにタイムテーブルをいじっては壊し、作っても育つまで待てずまた壊すうちに、何曜日の何時にどんな番組をやっているかがわからなくなってしまった。その典型が2019年1月に放送開始した「アオハルTV」だ。若い社員が総合演出を務めたぶっ飛んだ番組だった。

だがせっかく面白い番組を発見しても翌週には特番が組まれたり、その前の番組の2時間スペシャルになったりするので視聴習慣が定着しない。8月に番組は終わってしまい、総合演出を務めた社員は辞めてしまった。

戦略を立ててどんと腰を据え長期的に大きく構えるような編成ができない。そもそも、この10年間で5人社長が替わり一人平均2年しか在任できず、社長が変わると編成方針も変わるのだから、長期的戦略に基づく編成はできないのだ。

日本テレビは「コア視聴率」を目標に据えて三冠王奪還まで7年かかっている。日本テレビは戦略を信じて耐え抜いたが、フジテレビには短期的な視点しかなくその胆力がなかった。

視聴率を上げようと四苦八苦した揚げ句、本来強かった若者層も離れてしまった。月9は若い女性が憧れる恋愛ドラマの枠だったのに、サスペンスになったり医療ものになったり法曹ドラマになったりコロコロ変わり、どういう枠かわからなくなった。自分の資産の価値を自分で潰してしまったのだ。

実はいい芽が出ている?

フジテレビへのCM出稿は2025年度に入っても簡単には戻らないだろう。これから何年間かは雌伏するしかない。だがその間に、どんな局を目指すかの戦略を練るべきだ。実はいい芽が出ていると私は思う。

昨年の27時間テレビでは総合演出に若手が抜擢され、「日本一楽しい学園祭!」を副題に「学校かくれんぼ」など若者たちとタレントたちが共にテレビで遊ぶ企画が満載だった。80年代に若者たちの解放区として人気を得たフジテレビのDNAも感じられた。

いまの10代にとっての「私たちのテレビ」を目指せる下地ができかけている。これを大事にし、配信でも若者たちと交流できれば、新しい形の「放送+配信ステーション」が構築できるのではないか。

新世代が経営する、新世代に向けたメディアとして生まれ変わるポテンシャルは十分あるだろう。時代なんて、パッと変わる。今の苦境を乗り越えたところに、何かが待っているはずだ。そのためにも、経営体制の一新を図るべきだと思う。

境 治 メディアコンサルタント

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さかい おさむ / Osamu Sakai

1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。エム・データ顧問研究員。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。

X(旧Twitter):@sakaiosamu

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