空前のコメ不足発生、流通で陰る"農協の支配力" 727万トンの4割をJAなどが集荷しているが…
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米価高騰は早期に緩和か
では、このままJAの集荷率は落ちていくのか。あるコメ卸業者の役員は「揺り戻しがあるはず」と予測する。最大の理由はインボイス制度での「農協特例」だ。
23年10月に始まった同制度では、売り上げが年間1000万円未満の事業者も消費税を国に納める「課税事業者」として扱うことになった。同制度への登録は任意。ただ、免税事業者のままでいると、取引先が消費税の仕入れ税額の控除を受けられない。つまり損をするため、免税事業者は敬遠される。稲作農家の多くは年間農業収入が1000万円に達していないため、大半は免税事業者だった。
ところが同制度では、農家がJAをはじめとする協同組合などに、無条件委託販売と共同計算を条件に出荷する場合、インボイスの交付義務が免除されるという特例を設けた。これが農協特例だ。
インボイス制度では激変緩和のため、26年9月末まで8割控除、29年9月末まで5割控除という経過措置を取っている。コメの集荷はさらにJA有利となった。
現時点では、JA以外の買い手が農家に異常な高値を提示しているため、その影響は見られない。だが、JA以外の買い手が懸念しているのは5割控除になる26年産以降だ。先述のコメ卸業者の役員は「5割控除となると、(消費税の負担が重く、われわれ民間業者は)集荷できなくなる」と危惧する。
加えて、米価の異常な高騰はいつまでも続くわけではない。産地はこれまで減産傾向にあったが、25年産では前年産より増産する計画だ。さらに江藤拓農水相は2月7日、政府備蓄米の放出準備を進めていることを明かした。実現すれば、25年の収穫期を待たずとも需給は緩和する可能性が高い。
「市場原理」が働かないとされてきたコメの世界。現物市場や先物市場が誕生しては、JAの反対に遭って潰されてきた経緯もある。それが令和の米騒動を招いた要因にもなっている。流通構造がいびつである限り、業界関係者はもとより消費者も損を被り続けることになる。
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