貨物列車の運転席「同乗取材」で見た乗務のリアル 青函トンネル通る、JRの長大編成コンテナ列車
旅客列車と貨物列車の運転の違いについても大場部長が教えてくれた。最大の違いはパワーウエイトレシオ(重量と出力の比率)だという。
たとえばEH800形の出力は4000kwで、機関車にコンテナ貨車20両を合計した重量は1100トン程度。これに対して、全長約400mで貨物列車の長さに近い16両編成の新幹線の場合、出力は1万7000kWで1編成あたりの重量は満員の客を乗せても800トン程度。同じ出力で比べると牽引する重量は7倍程度の開きがある。つまり、貨物列車の出力は新幹線の約7分の1にすぎず、同じ馬力で新幹線の約7倍の重量を動かす必要がある。しかも、多くの車両にモーターが付いている新幹線と違い、貨物列車は出力が先頭の機関車のみに集中しているため、空転防止にも気を使う必要がある。
JR貨物五稜郭機関区の吉田宗平副区長は次のように説明する。
「貨物列車の運転士は先々を予測して運転します。たとえば、上り勾配なら坂の真上でブレーキをかけるのではなく、真上の手前で動力を切って、あとは重さを利用して惰性で上る。うまい運転士ほど“手数(てかず)”が少ないといいます。動力を切った状態で運転する距離が長く、機器を動かす回数が少ないのです」
先々を予測して運転するためには、「自分が運転する区間について、勾配、曲線、信号や標識などの位置を頭に叩き込んでおく必要がある」とのことだった。
札幌行き貨物列車に同乗
今回同乗取材を行うのは越谷貨物ターミナル駅(埼玉県越谷市)を0時20分に出発した3063列車。20両のコンテナ貨車を牽引し、コンテナの中には飲料、家電、宅配貨物などが積まれている。
青森から函館までの運転を担当する三橋直幸運転士によると、乗車時に牽引する両数と重量が伝えられる。重さによって動力やブレーキの効き具合が変わるので、○トン重ければ○m早めに動力を切るといった具合に、その加減を頭の中で瞬時に計算するのだという。
![JR貨物 運転士](https://tk.ismcdn.jp/mwimgs/4/f/570/img_4fc0b26916bf839088260087437a8993456019.jpg)
3063列車は予定では青森総合鉄道部内にある青森信号場に13時07分に到着し、運転士を交替し、機関車を付け替えて13時38分に出発することになっている。
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