性的少数者まさかの黒人差別でハリウッド大混乱 オスカー候補のトランスジェンダー女優が「出禁」に

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「マイノリティ」「女性」は、この映画のアピールポイント。その象徴でもあったのが、トランスジェンダーのガスコンだったのだ。

だが、実は、その本人は、ほかのマイノリティも、権利のために立ち上がる女性も、嫌いだった。ハリウッドとアカデミーは、それを知らずに彼女を応援してきた。なんというまぬけな話だろうか。

完全な孤立無援に

逆に、ハリウッドを嫌うトランプ支持者にすれば、すばらしい笑いのネタだろう。だが、彼らもガスコンの味方にはつかない。ガスコンの投稿内容自体は、トランプ支持者が共感しそうなことだらけ。もしガスコンが生まれた時のままのスペイン人男性だったなら、ある意味、ヒーローになったかもしれない。しかし、トランプは、最近も、「性別は男性と女性の2つしかない」と言い放ったばかりだ。

ついこの間までアワードシーズンを一緒に歩む仲間だった『エミリア・ペレス』の監督や共演者も、もはやガスコンと距離を置いている。いくらガスコンが「今の私は昔と変わった」と主張しても、あれらの投稿は衝撃的すぎて、彼女をかばうことは自分のイメージダウンにつながる。

とくに助演のゾーイ・サルダナは、長いキャリアの中で初めてオスカー候補入りを果たし、受賞を目の前にしている。このチャンスを逃すわけにはいかない。

そんなふうに、ガスコンは、今や孤立無援となった。アカデミー賞に候補入りしていて、授賞式に行きたいのに行けない彼女は、これからどうするのか。その日はどこで何をして過ごすのか。予想通りサルダナが受賞したら、お祝いのメッセージを贈るのか。それに対して返事は来るのか。

華やかなアカデミー賞も、今年は暗い影がつきまとう。 

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。
X:@yukisaruwatari
 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事