「フジ→文春」大衆の矛先が一気に変わった理由 世紀の誤報に加え、会見でのノイズ活用が効いた

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ネット環境が常に過剰な情報で満たされている中で、注目を獲得するためには、SNSへの波及の仕方を計算に入れつつ、今の時代が求めている燃焼性の高い話題を拡散する必要がある。

このような構図は、2000年代以降、アテンション・エコノミー(関心経済)という概念で語られてきた。かつて社会学者のマイケル・ゴールドハーバーは、世界経済が物質ベースのものから人間の注意力に基づく情報ベースのものへと移行すると予見した。

アテンション=注意・関心の争奪戦であり、そこでは「耳目を集められた者」が勝者となる。注意・関心を作り出せるということは、媒体やプラットフォームそのものが広範な影響力を持つようになり、新たな権力が生じ得るということでもある。だが、この弊害についてはあまり検証されていない。

法学者のティム・ウーは、先の概念を踏まえ、「アテンション・ブローカー」という考え方を提唱した。この場合の仲介とは人間の注意・関心を転売することを指す。人々に娯楽やニュース、無料サービスなどを提供することで注目を集め、その注目を広告主に転売して現金を得ることである(Blind Spot: The Attention Economy and the Law/Antitrust Law Journal Vol.82〈2019〉)。

純粋なアテンション・ブローカーの例として、メタやXのようなソーシャルメディア企業、グーグルなどの検索エンジン、一部のニュースサイトやテレビチャンネルを挙げている。このブローカーの原点は、19世紀の新聞までたどれるとウーはいう。

人々の注意・関心を効率的に引き付ける現代科学の粋を尽くしたSNSの台頭は、他のアテンション・ブローカーたちを否応なく再編した。デジタルメディアの生態系においてかつてない規模のブースター(増幅器)として、人々の注意・関心を独占し始めたからである。そこに、ポリティカル・コレクトネス(人権的な見地からの表現や言葉の是正)の深化が加わり、それに対応する形でリスクマネジメントが高度化せざるを得なくなっていった。

オールドメディアとネットメディアの相互浸透

多くのメディアがSNS的なブーストがかかりやすい娯楽やニュースなどを提供するという順応が進んだ。これは言い換えれば、オールドメディアとネットメディアの相互浸透である。

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