生成AIが引き起こす深刻な「電力不足」解決のカギ 検索エンジンと比べても生成AIは電力爆食

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昨年12月に公表された「GX2040ビジョン」の素案には、こうした問題意識を背景に、DC地域分散を通じた再エネ活用(ワット・ビット連携)を支援する方針が明記された。すでに実用段階に入った超高速・低遅延のオール光ネットワークの全国的な整備が、DC地域分散を後押しする可能性もある。

生成AIを十分に活用しながらAI用DCの電力消費を減らしていく道筋はあるのだろうか。先述したとおり、モデルサイズの小さいAIの開発・利用を進めることは有効な対策である。とりわけ、スマートフォンやロボットのような端末・機器に小型のAIを搭載できれば、DCの計算負担を減らすことにつながるだろう。

チップの省電力化に道

DCの省電力化も重要だ。DCの電力消費は主にサーバーやチップなどのデータ処理部と、冷却部などの周辺設備で発生する。冷却については、パイプやドアに冷却水を流す液冷や、絶縁性オイルに設備を浸す液浸などの技術進展に期待がかかる。ただしメガクラウドのDCではすでに周辺設備の省電力化が進んでおり、効果は頭打ちになる可能性がある。

より本質的な対策となるのは、GPU(画像処理装置)など計算チップの省電力化だ。具体的な技術としては、「ムーアの法則」として知られる半導体集積化、複数のチップを1つの部品のようにパッケージする先端パッケージング、チップ内の信号伝送を光化する光電融合、AIに特化した超並列計算チップの開発などが想定される。

当社の試算では、これらの技術の組み合わせを通じて、チップの電力効率(一定の電力量で処理できる演算数)は20年からの20年間で最大約6万倍に上昇する可能性がある。同じ消費電力で約6万倍の計算処理を行うことが可能で、その効果は絶大だ。

電力制約が生成AIの社会実装の阻害要因となってはならない。日本は技術力を結集し、生成AIの電力制約を緩和するチップの省電力化や小型AIの開発に注力すべきだ。ただし技術進展は一定の不確実性を伴う。リスクシナリオも考慮したエネルギーの安定供給にも十分に配慮すべきだろう。

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西角 直樹 三菱総合研究所 主席研究員

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にしかど・なおき

1997年入社。情報通信分野の競争政策や料金政策などの政策立案支援、ブロードバンドやモバイルの事業戦略コンサルティングなどに従事。現在は研究提言チーフ。

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