不満のはけ口?医療者がSNS「不適切投稿」の背景 海外では「手術を生中継した」医師が免許剥奪も

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筆者は、医療従事者がこのような問題行動を起こす背景には、過酷な勤務環境というものがあるように思っている。

労働環境の改善といえば、2024年4月に医師の働き方改革が施行された。これにより一般医師の時間外労働は年間960時間以内に制限され、過重労働を防ぐ目的で、勤務間インターバル制度や業務分散が導入された。

病院経営のしわ寄せが看護師に

問題は看護師だ。

日本看護協会が発表した「2023年病院看護実態調査報告書」によれば、看護師の月平均超過勤務時間は約5.2時間だが、この数字が実態を示しているのか、甚だ疑問だ。

関東学院大学と慶応義塾大学の研究チームが、2023年に『日本看護科学会誌』に発表した研究によれば、研究対象となった6施設62病棟では、日勤1回当たりの超過勤務は、約2時間だった。

日本医療労働組合連合会(医労連)が、全国大学高専教職員組合および日本自治体労働組合総連合会と合同で実施した「2022年看護職員の労働実態調査」によれば、看護職員の約7割がサービス残業を経験しているという。

看護師不足、病院の経営難など、さまざまな要因のしわ寄せが、看護師にいっていることがわかる。

このような状況は、看護師のメンタルをむしばむ。

前出の調査では、4割の看護職員は自らが働く職場にメンタルの問題で休養・治療している職員がいると回答し、6割以上の看護師が仕事で不満やストレスを抱えていると回答した。78.4%が慢性的な疲労を抱え、79.2%が仕事を辞めたいと考えていた。

看護師は病気になった人やケガを負った人のケアを行う。自らのミスが患者の命に直結することが少なくない。この調査では、86%が過去3年間にミスやニアミスを起こしたと回答している。

看護師らしき人物がSNSに不適切な投稿をした今回のケースにあった「インシデント報告」とは、ミスやニアミスを減らすための試みだ。医療現場で発生した、患者に被害を及ぼす可能性のある出来事やヒヤリとした事例を記録し、共有する。例えば、薬剤を準備する際にミスを発見し、投与を中止したようなケースだ。

このインシデント報告は、個人の責任を追及するものではないとされているが、看護師にはストレスがかかる。

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