不満のはけ口?医療者がSNS「不適切投稿」の背景 海外では「手術を生中継した」医師が免許剥奪も
2018年、アメリカ・テキサス州の小児病院の看護師が、SNSに患者情報を投稿し、HIPAA法(医療保険の携行性と責任に関する法)に違反しているとして、病院を解雇された。
この看護師は、自らが看護した麻疹(はしか)に罹った男児の様子をSNSに投稿。麻疹の深刻さが想像以上と感じたことや、これまでに麻疹患者に接したことがなかったことを明かした。
看護師はワクチン懐疑主義者だったが、「反ワクチン派として、私たちは簡単に仮定を立てがちですが、大多数の人はこれらの病気を見たことがなく、今後も見ることはないでしょう」とコメントし、十分な知識や経験を持たないまま、独善的な議論におちいるリスクを指摘している。
そして、「この子が本当に苦しんでいる様子を目の当たりにすると、親として恐怖から予防接種を選ぶ気持ちも理解できる」と記している。その一方で、「(今回の経験があっても)自分のワクチンに対する立場は変わらない」とも述べている。
この例は、患者や保護者の同意を得て、個人が特定されないよう配慮したうえで医学会などで発表していたのなら、何の問題もなかっただろう。
この看護師が解雇されたのは、自らの主義主張を述べるために、無断で患者の個人情報をSNSにさらしたからだ。患者の利益を最優先しなければならない医療従事者としてあってはならない行為だ。小児病院の経営陣が、看護師を解雇したのも理解できる。
手術の光景をライブストリーミング
グロー医師事件も有名だ。
「ロキシー先生」の愛称で有名だったキャサリン・ロクサンヌ・グロー医師は、TikTokで手術の光景をライブストリーミングし、手術中に視聴者の質問に答えていた。このような行為を少なくとも4年に渡り続けていたようで、2023年7月、オハイオ州医療委員会が医師免許を剥奪した。
あまりにも軽率な行為だが、このようなケースは日本でも多数報告されており、過去の事例をまとめた研究すらある。2016年に福島県立医科大学の研究チームが『医学教育』誌に発表したものだ。
彼らは朝日新聞記事データベース「聞蔵IIビジュアル・フォーライブラリー」などのマスコミのデータベースや検索サイトと用いて、2005~2014年の間に、医療従事者がインターネット上で起こしたモラルハザード事例を集めた。
この研究では20例が抽出され、問題行動の内訳は、守秘義務違反10例、悪ふざけ6例、誹謗中傷5例、不正2例だった。「患者を侮辱した忘年会の余興写真をアップロードした」「『(点滴を)わざと失敗した』と虚偽報告をした」「『死んでほしい』と中傷する書き込みをした」など、今回のケースと似たような問題行動を起こしている。
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