「保育園落ちて育休延長」審査厳格化がはらむ矛盾 提出書類は増え、自治体の負担も結局減らない
というのも、この厳格化は「保留通知を求めての入園を望まない入園申請」が増加し、自治体の負担が増えていることが問題になり、検討されたものだからです。
保留通知が必要とされる以上、保留通知を求めての入園申請はなくならないのではないか。また、延長不可に当たるような場合でも、やむをえない事情がある場合には救済されるように、個別の事情を聞き取り配慮することは非常に重要で、必ずやってほしいことですが、これを公正に行うことはなかなか大変なことです。結局、自治体に問い合わせないと判断できないことも多いのではないでしょうか。
そもそも自治体は利用調整にあたって、細かい基準を設け必要な証明などを提出させて、入園希望者の優先順位を決めているわけですが、ハローワークでもそういった個別の細かい審査を行うとすれば、それはそれでたいへんな事務負担になるおそれがあります。
ハローワークには、もっと本来の目的のために求められる業務に労力を割いてほしいと、納税者の観点からは考えてしまうのです。
混乱の背景
そもそも育児休業は、法律では原則1歳までとされていますが、勤務先が認めれば1歳を超えても取得できます。
これに対して、育児休業中に支給される育児休業給付金(1人の親について180日間以内は賃金の67%、それを超えると50%)は雇用保険等を財源に給付されるもので、受給するためには勤務先を経由してハローワークに申請することが必要になります。
これを1歳以降も継続するためには、待機児童になっていることを証明する書類を提出することが、制度開始当初からお約束になっていました。
待機児童になっていることを証明する書類とは、保留通知のことで、実際に認可保育園等の入園を申請して落選しなければ発行されないものです。
昨今、育児休業の延長を希望する家庭が増え、保留通知を入手するために、入園を望まない入園申請をするケースが増加してきました。このことが、自治体事務を混乱させ、負担を大きくしているという訴えが、内閣府の「地方分権改革に関する提案」に提出され、今回の「厳格化」の流れになったのです。
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