苦境に立つ野村ホールディングス、脱「リーマン」へ転換

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緊急時は公的支援で信用秩序を維持か

さらに、ムーディーズは今回の見直しで「日本銀行からのシステミックサポート(流動性支援)提供の可能性」についても検討。この点については、米スタンダード&プアーズ(S&P)が昨年12月2日に野村の格付けを銀行の新格付け基準に基づいて見直し、「必要時に日本政府による特別支援の可能性が高い」としたうえで、政府支援分を2段階加味して「BBB+」(見通しは安定的)に据え置いている。

日本の証券会社は昔から日銀に預金口座を持っており、日銀から流動性の供給を受けられる。一方、米国の証券会社だったリーマンは中央銀行へのアクセスがなく、流動性危機で破綻に至った。同業の米ゴールドマン・サックスと米モルガン・スタンレーは慌てて銀行持ち株会社へ業態転換した経緯がある。

ただ日本の証券会社は、預金保険法で公的資本が注入されてきた銀行とは違い、危機時の公的資本注入についてはあいまいな存在。そのため、S&Pは見直しの過程で政府・日銀にヒアリングを実施。野村に対しては緊急時や危機時において、日銀法(38条)による公的金融支援(無担保での日銀特融など)や政府による資本注入が実施される可能性が高いとの結論に達した。

「米証券会社のリーマンが破綻したことの影響は絶大だった。野村は国内最大の証券会社であり、グローバルな取引関係も多い。政府・日銀は信用秩序維持の観点から、いざという時にはサポートに乗り出す」とS&Pのアナリストは見る。

こうした要因を考えれば、格下げはあっても最小限にとどまる公算が大。公的支援分を重視して、据え置きの可能性も十分考えられる。

しかし、野村が抱える問題は足元の財務体質よりもむしろ、リーマン買収効果を発揮できないまま、海外でジリ貧が続くことだ。

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