中居騒動で「示談金の多寡」を論じるのが不毛な訳 物事の本質を見失う可能性すらある
「9000万円」そのものがニュースバリュー(報道価値)を残している場合、見出しに取ってもおかしくはない。しかしこの金額は、ここ数日で明らかになったものではない。もうすぐ初報から1カ月が経つため、単体でのバリューはさほどないと考えられる。
そこで思いつく背景が、「額面以上にインパクトのある追加情報がない」ことだ。1人でも多くの読者に読んでもらうためには、見出しからして強いものを用意する必要がある。しかしながら、それに足りるプラスアルファがなければ、いつまでもしがみつくしかない……といった事情も理解できる。
また、場合によっては「他媒体がやっているから、なんとなく」という事情もあるかもしれない。自社では手応えを感じていないが、各社が多用しているなら「ウケる可能性」があるからと、とくに考えずに採用している可能性もある。
ここまでいくつかの理由を挙げたが、それらの行き着く先は、最終的に「閲覧数が稼げるから」へ集約される。
具体的な数字を加えることで、読者の閲覧意欲をかきたてるテクニックは、「街のおいしいグルメ10選」といった記事で見たことがあるだろう。
また、解決金としての多寡は別として、一般的な金銭感覚からして、9000万円は大金の部類になる。あえて書くことにより、浮世離れした印象を与え、報道ではなく「小説感覚」で読ませようという意図もあるかもしれない。
ゲスな編集者だったら、「1億円のほうがよりインパクトがあったのに」と残念がっている可能性すらある。
しかし、こうした「9000万円」見出しは、近々姿を消すだろう。その一番の理由は、本件がすでに中居氏個人の女性問題にとどまらず、編成幹部を軸にしたフジテレビのコーポレートガバナンスやコンプライアンス、そして業界慣習の抱える「旧態依然とした闇」の問題になりつつあることだ。
今回、現役アナが証言したことにより、今後さらにフジ社内からのリークが出ることは避けられないだろう。また、きっかけはフジテレビだとしても、その後に他局での類似事例が報じられるかもしれない。
そして、業界内の「あるある」だと判明すれば、芸能プロダクション各社も知らないわけがない……となり、疑惑は雪だるま式に膨らんでいく。
物事の本質を見失ってしまう
そう考えると、もはや「人気タレントのスキャンダル」にとどまらない。ゆくゆくは放送法を所管する総務省も動き出すかもしれない。
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