金価格は第2次トランプ政権下でも上昇するのか 2025年の前半はかなり不安定な値動きになる?
インフレ見通しについても、FRBが注視しているとされる個人消費支出(PCE)価格指数の中央値も、2025年の予想は総合指数が9月時点の2.1%から2.5%に、エネルギーと食品を除いたコア指数が2.2%から2.5%に、それぞれ上方修正されているように、FRB内では、インフレに対する警戒感がかなり高まっている。
実際、昨年12月20日に発表された同11月のPCE価格指数は、総合指数が前年比2.44%、食品・エネルギーを除くコア指数が同2.82%の上昇となった。今後発表されるPCE価格指数が総合指数、コア指数ともに2.5%を上回る水準で推移するようなら、2025年の利下げ幅は0.5%からさらに小さくなりそうだ。すでに次回のFOMCは1月28~29日に迫っている。
「地政学リスクで買い」は、意外に長続きしないことも
みてきたように、2025年の金市場は、安全資産として需要が下支えとなるいっぽう、インフレの再燃やアメリカの長期金利上昇に対する懸念が重石となる中で、かなり不安定な展開となりそうだ。どちらかといえば、やはり後者の要因から売りが先行することになるとみておいたほうがよいだろう。
確かに、今後も中東情勢やウクライナ問題の長期化、緊迫化など、地政学リスクの高まりが安全資産としての買いを一段と呼び込むことも十分にありうる。だがこうした情勢不安は、何か問題が生じた直後こそ大きく相場を動かすことになるものの、材料として長続きしないことが多いものでもある。
いざ大規模な軍事衝突が起こってしまえば、市場の不安については、それ以上に高まる可能性が逆に低くなるものだ。極端な話をすれば 、双方の軍事力がよほど均衡していない限り、早期に勝敗が決定する可能性が高いからだ。
一方、インフレの高止まりやそれに伴うアメリカ長期金利の上昇は、かなり持続的な金の下落トレンドを作り出す可能性が高いと考えておいたほうがよいだろう。
第2次トランプ政権が打ち出すとしている大幅な減税案が実現すれば、財政赤字が一段と増加、長期金利の上昇圧力が強まるのは必至だし、短期的にはそうした政策によって景気や消費が刺激され、さらなるインフレにつながる恐れも高いと思われる。
ここまでの金相場上昇の背景には、インフレが順調に後退し、金利も低下基調が続くとの見通しがあったことは間違いないだけに、その前提が崩れた際には売り圧力も相当なものとなりそうだ。状況次第では、1トロイオンス=2020ドル近辺まで値を崩すことがあっても、何ら不思議はない。
もちろん、インフレや金利上昇が、永遠に金相場の重石となり続けるわけではない。インフレ抑制のためにFRBが再びタカ派姿勢を強めれば、いずれかの時点でアメリカの景気も本格的に減速を始めることになる。その際には株価の調整も大きなものになるとは思われるが、いったんそうした状況に陥ればインフレ圧力も後退し、FRBも積極的に金融緩和を進められるようになるだろう。
問題はいつそのような事態になるかであり、それを正確に言い当てるのは非常に困難だ。だが、少なくとも2025年前半は慎重な姿勢を維持しておいたほうがよい。そしてFRBが明らかに利下げを進められるようになった際は、金相場にとっても大きな買い場が到来することになるのではないか。
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