建築家がまちづくり「ニシイケバレイ」の"豊かさ" 「自分の街は、自ら住みやすく変えていく」

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白百合荘前のアスファルトを剥がし、植え込みに。植え込みの奥が住民の使う裏動線、手前側はsyokutaku(飲食店)に入店する際に使う表動線と、ゆるやかな境界になっている(写真/筆者)

自ら住みやすい街に変えていくためのまちづくり

建築家として数々の住宅の設計を手掛けてきた須藤さんは、これまでも住宅以外の機能を併設した個人住宅をいくつも設計してきたそうです。

「人生は不確かなもので、この先どうなるかは誰にもわからないにも関わらず、住宅をもとうとするとある時点でのライフプランを反映したものになりがちです。

その時に、住宅としてしか使いようがないものとして設計してしまうと、融通が効かなくなりリスクを孕むことになると思っているんです。少しの余白をもっておくと、選択肢が増え、生き方が変わったときにも備えておくことができるのではないかと思います」

当初からそのような要望を受けて設計する場合もあれば、打ち合わせを通して要望を具体化していく過程で、専用住宅とは異なる住宅を選ばれる方もいるのだそう。

「これまで、酒屋や飲食店を併設した住宅や、さまざまな用途で使用できる外部に開いたガラス張りのフリースペースを設けた住宅など、自ら事業を行ったり住み手以外に使ってもらえる場所を設けた住宅をいろいろと設計してきました。

自営にしろテナントに貸し出すにしろ、住宅に収入を生み出す部分をつくることで、ローンの返済上も有利になり、希望する立地を購入できるといったメリットもあります。

ただそれ以上に、本来であれば外部に依存しなければならない自分がほしい環境を、自ら手に入れる手段として有効なのではないかと考えています(店舗兼用住宅の住宅ローンの利用については銀行によって見解が分かれるので確認が必要です)」

そのような考えのもと、須藤さんはニシイケバレイからもほど近い目白に土地を購入し、自身が経営する設計事務所と飲食店「CaD(カド)」を併設した自邸を設計。2024年春にオープンしました。

もともとはテナントに貸し出す予定だった店舗スペースも、深野さんが自らChanoma(カフェ)を経営し、ニシイケバレイの住人や常連さんなど地域の人びととの関係を構築する様子を見たことも自身で経営することにした一因だったとのことです。自ら経営することで、「自分が家の近くにほしいと思う場所をつくることができる」と考えるようになったといいます。

須藤さん自邸全景。目白通りから1本入った、2~3階建ての住宅が連なる閑静な住宅街に立つ(写真/Kenta Hasegawa)

飲食店経営の経験はなかったものの、Chanomaのスタッフと一緒に立ち上げを行ったり、自宅兼酒屋を設計したIMADEYAからお酒を、沖縄で出会った加工肉のお店からハムやソーセージを仕入れ、と、これまでの縁を紡ぐように開店準備を進めていきました。

「CaD」という店名にはまちカドのカド、「Charcuterie and Drinks(食肉加工品と飲み物)」の略、このまちのくらしを耕し発展させる「Cultivate and Develop」といった意味が込められています。

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