
──言葉の問題を、「発話」という行為に着目して問い直している点が印象的でした。
一般に、言葉は、本物に対する不完全な模造品というイメージで捉えられやすい。最近、三省堂の「今年の新語 2024」で「言語化」が大賞になったが、「言語化」という言い方にも、何か言い表すべき思考や感情がまずあって、それを言葉に置き換える、つまり「言葉というラベルを貼る」ようなイメージがある。しかし、それだけでは、言葉の果たす役割を歪めて捉えてしまいかねない。
言語化されたものは単純化されており、不正確で偏っている、というイメージに対して、まずは「言葉は発話するものであり、行為である」という点を確認する必要がある。誰かの肩をたたいたり、押したりする行為と同じように、発話は、人に具体的に働きかけ、影響を及ぼす行為だ。この視点を持たなければ、私たちに染み付いた言葉やその機能・役割について問い直すのは難しい。
──2章では、プラトンの書き言葉批判を取り上げながら、「記憶の外部化」や「言葉の独り歩き」について論じています。その現代性に驚かされました。
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