スズキを巨大企業にした鈴木修氏「娘婿の意地」 「中小企業のおやじ」が見せた経営への執念
1930年生まれ戦中派世代の鈴木氏は、銀行員を経てスズキに入社した後、先輩たちの「お手並み拝見」といった周囲の鋭い監視と人間関係に耐えなくてはならなかった。そのほか、義父からも厳しい経営指導を受ける。このような娘婿の苦悩を乗り越えて、自ら実績を積み重ね、実力を証明していかなくては周囲がついてこない。親族からも見放される。
スズキにとって知性と行動力に長けた社長候補の娘婿を失ったのは想定外だったが、「娘婿企業スズキ」で実子(長男)が継ぐという初の統治形態が試されている。
ファミリービジネスの成否を左右するもの
ファミリービジネスの成否を左右する家庭の存在自体が大きく変化している。かつて、企業を経営する富裕層といえば、大きな屋敷に3世代、4世代同居というケースがめずらしくなかったが、今やそうした層でも夫婦と子供からなる核家族へと急速に変化している。
スープの冷めない距離に住んでいるかもしれないが、家で日常的に創業者が孫に経営の話をする機会はめっきり減った。少子化により兄弟間で家の事業について話すことも少なくなっている。
さらに、家父長制度の崩壊による意識の変化、友達のような親子関係や離婚の増加は、ファミリービジネスにおける「家庭の影響」を大きく変えた。ファミリービジネスを営む家庭も「普通の家庭」になりつつあると言えよう。
ファミリービジネスの家庭での「普通でない」点をあげるとすれば2つある。1つは、多くが裕福な暮らしをしていること。もう1つは、一般家庭では教育しようとしても難しい帝王学を物心がついた頃から教授される、という点だ。
前者には気をつけなくてはならない大きなリスクが隠されている。いわゆるマウントをとるという態度である。そのような態度、考えが少しでも表出されると、従業員の心に「シャーデンフロイデ」(人の不幸は蜜の味)が働くようになる。
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