中央銀行栄え、国滅ぶ台湾、代償大きい最大の公営事業

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投資資金は不動産へ住宅は高嶺の花に

低金利によって定期預金の利息に期待できない台湾の市民は、ハイリスク・ハイリターンの投資を求めるようになった。一方で低金利や金融機関の貸し出し態度の消極性がもたらした資金のだぶつきにより、投資資金は不動産に流れ込んでいる。住宅価格が高騰しており、庶民にとって住宅は高嶺の花となった。

また、長期的な台湾ドル安は内需産業に打撃を与えている。99年以降、台湾ドルの実質実効為替レートの下落に伴って、内需の重要指標である民間消費の成長率が低下した。反面、台湾ドル安が有利に働く輸出業者にとっても、国際的に低価格競争が激化する中で、商品生産費用やサービス面で不利となっている。

さらに台湾中銀の利益獲得の大きな源泉となる外貨準備も、国民の資産形成にとっては悪影響だ。現在、台湾の外貨準備は3900億米ドル近くに上り、台湾人口の2300万人で割ると1人当たり1万7000米ドルとなる。これは1人当たりの平均可処分所得に相当する額。台湾人が稼いだ分と同額のおカネが海外に貯金され、為替や金利などさまざまなリスクにさらされているのだ。

しかし、その責任は必ずしも、彭・台湾中銀総裁にあるとはいえない。台湾中銀の予算は立法院の監督を受け、現時点で立法院、行政院とも台湾中銀の莫大な利益獲得に対して、より多くの利益創出を奨励する姿勢を示している。

行政院と立法院が台湾中銀の役割を取り違えており、国家歳入の10%以上を台湾中銀に頼っていることは問題なのだ。なぜなら、それと引き換えに支払わなければならない代償が、あまりに大きすぎるからだ。

(台湾『今周刊』No.784/楊 紹華記者 =週刊東洋経済2012年1月28日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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