シャネルはYouTubeでライバルに完勝した デジタルマーケに成功した要因とは?

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YouTubeにおけるシャネルのコンテンツの多くは、さまざまなスターが出演している広告(社内では『映画』と呼称。もっとも、平均的な時間は1分から2分程度だが)や美容ガイドだ。もっとも視聴されているのは、「マリリンとシャネルの5番」。あのマリリン・モンローのきわめて珍しい映像は、1300万回近くも視聴された。

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また、同社ではセレブを相手にしたメーキャップ・アーティスト、リサ・エリッジ氏を専属のビデオスタッフとして採用。YouTubeのマーケティング企業ピクサビリティ社が、2015年6月にリリースした「YouTubeでの美容研究」によると、YouTube動画における美容系コンテンツの65%は、「ハウツー(Tutorial)」か「コマーシャル(Commercial)」で占められるという(図参照)。

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YouTubeで配信される美容コンテンツの内訳。ハウツー(Tutorial)が45%、コマーシャル(Commercial)が20%を占め、大多数を形成している(L2社調査)

一方、法人向けのデジタル分析を手掛けるL2社の「2015年ビデオ研究」では、このようなトップカテゴリー内でコンテンツ製作をしても、それほど試聴されるわけではないとしている。むしろ、著名デザイナーのカール・ラガーフェルド氏が監修した、質の高いビデオを大量に製作したことが成功に貢献したという。

「シャネルは膨大な量のビデオ投稿によって、同業他社を圧倒している」と、研究を主導した同社リサーチ・アナリストのマーベル・マクリーン氏。「1回のファッションショーから、8本のYouTubeビデオが製作された。ビデオはラガーフェルド氏によるデザイナーらへのインタビューやセレブの出演者、ショーで用いられた衣装などを扱っており、多くの視聴者を魅了している」

配信したビデオは300本超え

シャネルがYouTubeに配信したビデオは300本を超している。だが、数多く配信したからといって、コンテンツの価値は薄まっていない。ファッション・ビジネスに詳しいファッションビー社のアナリスト、ゾーイ・ボーデロン氏は、「YouTubeとファッション・ブランドのインサイト報告」(2014年9月発表)の中で、シャネルのビデオの魅力について「ブランドのショーウィンドウとしてYouTubeを使っている。知名度を高めるためではなく、最新ニュースを更新して、ブランドの世界に深く引き込むことが目的なのだろう」と解説した。

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