ホテルの歴史的高騰の裏で「賃上げ」が二極化の訳 積極的にベアする企業の一方、中堅社員は憂き目?
引き上げの理由は、優秀な人材確保の機会損失を減少させるためと、サービスクオリティを維持すること。さらに、積極的なパフォーマンスをしてもらうための、若手人材への投資にあるという。
ホテル業界全体の給与水準についての質問には、「水準は低いと認識している。2023年1月の初任給の変更では、ホテル業界の水準のなかで高い初任給を設定しても優秀な人材は確保できないと考え、2023年当時の日本企業のトップクラスの初任給を参考に設定した」と回答した。
最低額引き上げ後の社内の反応については、「退職者数が減少し、退職理由を給与としたものも見当たらないことから、一定の好感と理解は得ていると考えている」とのこと。
一部、下位の者に給与が追いつかれそうな従業員からは不満も上がったそうだが、対策として、「もともと26万円という基本給は主任クラスのものであり、入社当初から投資として支給している意味を伝えている」と回答した。
今後の給与増については、待遇という経済条件だけではなく、「夢と希望を『ショーケース』に見せることが重要」と考えるという同社。夢とは、ホテルの最高ポストである総支配人になることができるというストーリーだ。
そして希望とは、そういったポストをなくさないため、企業が成長し、新規ホテルの開業が続くことを示し続けること。この2つへの努力を並行して実施していくという。
今後、運営ホテル数の増加によって全体収益は増加するため、必要な原資は確保できると考えている。
初任給アップの一方で、中堅社員が稼げないホテルも
このように、高い収益力とブランド力を持つ一部のホテルでは、賃上げの動きが出てきている。しかし、すべてのホテルに当てはまる話ではない。調査を進めるなかでは、中堅社員が抱える課題も見えてきた。
月刊ホテレスが2024年7月に発表した「ホテリエの賃金実態調査」によると、部長職以上の役職者の残業が月45時間以上、年360時間以上との回答が多く、ストレスを抱えている状況がある。
また同調査によると一般社員の場合、30代、40代であっても、年収は400万円が水準だ。人材獲得のために初任給が上がる傾向がある一方で、働きざかりの中堅世代が厳しい状況に立たされているのだ。
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