ホンダの「救済統合」否定で日産が問われる覚悟 チラつくホンハイの影、ルノーが握る「決定権」

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将来的なシナジーを1兆円以上創出する目標を掲げた(記者撮影)

両社は経営統合による将来的なシナジー効果を1兆円以上創出し、営業利益を3兆円とする目標と、統合のスタート時点で2社合計の営業利益を2兆円程度とする計画を示した。

ホンダの今期の営業利益計画は1.4兆円強。これを大きく伸ばすのは難しく、横ばい程度でみている。営業利益1500億円計画の日産を、5000億円超に回復させるシナリオだ。

そもそも基本合意書には「(日産の)ターンアラウンド(再建のための事業構造改革)の取り組みが着実に実行されることを前提に」とある。日産は生産能力の2割削減や9000人リストラなどの構造改革を2024年11月に公表済み。このうち明らかにしているのは北米やタイでの人員削減など一部にとどまる。

最終合意は2025年6月だが、統合へ進むかどうかは三菱自が判断する2025年1月末までに見極めるとする。それまでに日産が構造改革を実行することを説得力のある形でホンダに示せるかがポイントになる。

日産の内田誠社長は会見で「私の口から言うのも何だが、日産が厳しい状況になったのは経営責任だ」と語った。日産には取締役や常務執行役員以上で50人超の経営幹部がいる。こうした体制が経営の意思決定を遅らせ、現在の苦境を招いたのは間違いない。

ホンダ主導に日産側からは不安の声も

持ち株会社の社長はホンダ側が選定。取締役の過半もホンダが指名する。その理由は「資本の論理」(三部社長)だ。時価総額はホンダが約6.7兆円、日産が約1.6兆円と4倍の開きがある(12月23日時点)。

両社の力関係は明白とはいえ「立ち上がりはホンダがリードするが、永遠にリードするわけではない」(三部社長)とする。内田社長も「どちらが上、どちらが下ではない」と強調した。ただ、日産本社で働く社員は「最終的にはホンダに吸収されてもおかしくない。さらなるリストラとならないか」と不安を募らせる。

部品などのサプライヤーへの影響も避けられない。東京商工リサーチによれば、ホンダの取引先は1.5万社、日産の取引先は1.3万社、重複は5000社程度ある。統合によって発注や生産体制の集約化が進めば、淘汰が進むのは自然な流れだ。

日産の大手部品サプライヤー幹部は「ただでさえ日産は生産計画の下方修正を何度も繰り返していて厳しかったが、これからどうなるのか想像がつかない。2社統合で価格交渉が厳しくなることも懸念している」と明かす。

構造改革と経営統合で社員や取引先に負担を強いるのは確実。まず内田社長はじめ経営幹部の責任を明確化するのが先決だろう。そうでなければステークホルダーの理解は得られない。

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