誰がための「103万円の壁」引き上げか、混迷の税制 国民民主の「178万円」実現なら高所得層に大減税

✎ 1〜 ✎ 222 ✎ 223 ✎ 224 ✎ 225
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

これらと併せて、扶養控除が適用される親族となる所得水準を引き上げた。

これまで、扶養する対象となる親族が稼いだ課税前給与所得は、103万円以下だったが、これを123万円以下と引き上げることとした。これは、学生に限らず、123万円まで稼いでも扶養控除を適用できる親族となる。

扶養親族については、報道でもあまり報じられていなかった点だが、労働組合側は以前から課税最低限の引き上げを主張していたところであり、国民民主党は与党大綱に加わっていないものの、それを与党が忖度して盛り込んだものともいえそうだ。

法案成立後にさかのぼって適用される異例

この所得税制改正の異例なところは、2025年1月1日には上記の税制改正を根拠づける法律が成立していないにもかかわらず、2025年1月1日以降の所得に、改正法案成立後に後付けで減税措置を適用することである。

所得税制でこれだけ大きな税制改正を行う場合には、周知期間を置いたりするため、過去にさかのぼるように適用されることはなく、改正法案成立後から適用されるのが通例である。

岸田文雄内閣下で実施された2024年の定額減税は、一見すると、2024年1月1日にはそれを根拠づける法律が成立していなかったにもかかわらず、実施されたかのようにみえる。しかし、実際にはそうではない。この定額減税は、それを根拠づける改正法案成立後の6月から実施された。しかも、月々の源泉徴収時に定額の減税を行った。

ところが、今般の所得税制改正は、岸田内閣での定額減税とは措置がまったく異なる。なぜなら、変更される所得税制の控除は年単位で設定されているからである。すでに始まっている暦年で、根拠づける法律も成立していない段階で減税を実施することは、実務的にみて極めて困難である。

それでも強引ともいうべき形で過去にさかのぼるかのように実施できるというのは、年末調整を使うことを想定しているからである。

次ページ誰に減税効果がもたらされるのか
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事