宇宙ごみ除去・アストロスケール「下方修正」の背景 株式市場からの評価と期待を両立する難しさ

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もっとも、両プロジェクトに限らず、宇宙関連は事業の特性上、実際にどこまで順調であるのか、外部からは判断がしづらい。アストロスケールが目指すデブリ除去などは商業サービス化に向けた開発や実証の途上であり、世界でも前例がない。衛星を使う事業者に対するデブリ化防止などの義務を課す国際的なルールもまだ確立されていない。

受注活動を行っている案件の契約が締結できたとして、今後もマイルストーンを順調にクリアできるのか。技術的なハードルを越えて、商業サービスを開始できるのか。デブリ関連の市場がいつ本格的に立ち上がり、需要が大きく伸びるのか。合理的に予測するのは宇宙の専門家でも困難だろう。

アストロスケールのほか、月面輸送サービスの実現を目指すispace、小型SAR衛星の開発や運用を手掛けるQPS研究所やSynspectiveと、2023、2024年は宇宙関連のベンチャーが相次いで東証グロース市場に上場している。

まだ確固たる実績がない、市場創造型のこうした宇宙関連ベンチャーへの市場評価は、会社が語る「未来予想図」をどれだけ信じられるかという、いわば期待値で左右される。

今回のアストロスケールの下方修正では、株式市場にコミットしていた数字からネガティブな方向に乖離したことで投資家はセンシティブに反応。大引け後に下方修正を発表した12月13日の金曜日の終値819円に対し、週明け12月16日の株価は一時は127円安の692円まで下落した。

今後は保守的な出し方を検討

アナリスト説明会の中で、松山氏は「(収益計上の)タイミングがずれると影響も大きいので、今後はもう少し保守的に、決まっている契約をベースに業績予想を出しつつ、固まってきた段階から上方修正していくやり方も検討していく」とも語った。

さりながら、アストロスケールのような宇宙ベンチャーは株式市場からの期待を高める必要があることも事実だ。事業の特性上、先行投資の額は大きく、時間もかかる。おまけに成功するかはやってみないとわからない。事業を継続、拡大していくための資金を資本市場から調達したい。

そのためにはなるべく株価を高く維持しなければならないが、すぐに利益を出すことが難しい以上、ある程度は期待を膨らませるしかない。だが、期待を高めれば、実現のハードルは上がり、その通りにいかなかった際の反動が大きくなる。だからといって、保守的な開示姿勢が期待値を押し下げることになれば、成長に必要な資金調達の足かせになりうる。

新たなプロジェクトの調査契約受注の発表もあり、足下の株価は下方修正の発表前の水準まで戻っている。とはいえ、未知の領域に挑む以上、今後も紆余曲折は十分に起こりうる。

いかに株式市場への説明責任を果たしていくか。業績開示の最適なあり方を探る試行錯誤が続きそうだ。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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