グーグルAI幹部が明かす「AIと共存」に2つの道筋 「Google DeepMind」で実現してきたこととは?

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Gemini
グーグルのAI「Gemini」は2023年に、テキスト、オーディオ、画像、ビデオを扱えるマルチモーダルモデルとして登場した(筆者撮影)

そこでグーグルとしてのアプローチは、「いかに問題解決をするか?」に着目してAIを開発・活用していくことに集中しようというアイデアだ。これが「AIエージェント」という考え方である。

「エージェントは、ある目的のために、問題を解決してくれるAIの姿と言えます。

人々はAIによる問題解決を求めていますが、AIが人間のように振る舞ったり、対話ができたりすることを、必ずしも求めているわけではありません。人々のAIへの期待は、本当の人間のようなお喋り相手を求めないと考えています」(アジャラプ氏)

AIエージェントがチャット型のAIと異なる理由について、アジャラプ氏は、「人間は一人ひとり異なっており、AIからみれば、一貫性を欠く主人となってしまう」と指摘する。

そのため、現実の世界において、より機能的で、誰がやっても同様に効果が得られるように、機能に特化した問題解決に取り組むエージェントとしてAIを活用していく姿を目指すべきだとの考えだ。

そして、AIエージェントを作るのは、グーグルではなく、問題を抱えている我々だという。すでにGoogle Cloudでは、「Vertex AI Agent Builder」といわれる、ノーコードのAIエージェント構築環境を、企業向けに提供している。

具体的には、コールセンターにおけるユーザーへの回答をすぐに見つけ出すAI、旅行先や滞在先のおすすめと予約を実現するAI、メールなどの文章やコードを自動作成するAIなどが挙げられる。

AI時代の学生、ビジネスパーソンは何を学ぶべきか?

AIがビジネスから生活にまで入り込んでいく中で、いま学んでいる学生や社会人になりたてでこれからキャリア形成をしていく若者たちは、AIとどう向き合い、何を学んでいくべきなのか。

「これまでがそうであったように、テクノロジーによって仕事のシフトが起きることになるはずです。その中で、私は2つの道筋をアドバイスしたいと思います。

1つは、AIそのものを発展させる道です。

数学とアルゴリズム、コンピュータ・サイエンスの知識が必要で、博士号取得者が、それ以降もAIをAGIへ到達させるまでの絶え間ない改善に取り組むことで、優れた研究と価値を発揮するでしょう。

もう1つが、AIを用いて、社会的な付加価値を高めていく道です。

基礎的な科学を修めた人にとって、プログラミングは今後もどんどん簡単になり続けると思います。日本語であろうが英語であろうが、何らかの言語を知っていれば、エージェントを作り、それらを組み合わせて、社会の問題を解決し価値を高めるために必要なものを作り出せるからです」(アジャラプ氏)

ここで重要なことは、グーグルでAIを牽引しているアジャラプ氏としても、AIそのものが社会的価値を作り出す、とはまだ考えていない点だろう。

AIによって人の作り出す創造性を高める、もしくはAIの進化に貢献して人の創造性を底上げする。そのどちらかが、AI人材としての活躍の道筋となっており、グーグルのAI戦略も、この発展を最大化するための取り組みを、加速させていくことになる。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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