原油「混迷の1バレル=50ドル時代」は来るのか 一方で「100ドル突破」のリスクも払拭できず

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縮小

FRBはすでに9月から利下げに舵を切っているが、一方ではインフレの高止まりも懸念され始めており、利下げペースの鈍化が景気の減速を助長するシナリオにも警戒感を高めておいたほうがよさそうだ。

またこうした不透明な景気動向に加え、クリーンエネルギーの技術革新に伴って、石油やガスなどの化石燃料からクリーンエネルギーへのエネルギー転換が急速に進んでいることも、石油需要の低迷の大きな要因になるとみられている。

EV(電気自動車)の普及が進めば進むほど、ガソリンの消費は減少する。もちろん発電用のエネルギーの需要は急速な増加が予想されており、エネルギー消費全体が落ち込むわけではないが、少なくともガソリンやディーゼル燃料の需要が落ち込むことは避けられないのではないか。

サウジが増産主張なら1バレル=50ドル台までの下落も

もう一つ、大きな売り材料として忘れてはならないのが、産油国の生産動向だ。OPEC加盟国とロシアやメキシコなどの非OPEC産油国で構成するOPECプラスは12月5日に開いた会合で、2026年1月から予定していた減産幅の縮小の開始を、3カ月先送り(協調減産の期間延長)することで合意した。

これは元々、6月2日に開かれたOPECプラスの会合で、これまで行ってきた大幅な減産を段階的に縮小、つまりは生産量を増やしていくことで合意したことに始まっている。

当初は10月から増産を開始するとし、詳細な工程表も作成するなどしてその本気度を内外にアピールする格好となっていた。だが、その後相場の低迷が続いたことを受けて12月からに先送り、さらには2026年1月へと先送りしていたものを、改めて2026年4月からに延期した格好だ。

また、開始後の実質的な増産ペースも、従来に比べて穏やかなものに修正しており、産油国は依然として需給をなんとか引き締め、価格を押し上げるという方針を維持しているように思われる。

もっとも、こうした動きはあくまでも現状維持を狙ったもので、世界の需給を一段と引き締めて相場を押し上げるだけの効果は期待できないばかりか、足元で強まる価格下落圧力を食い止めることができるのかも怪しいところだろう。

一方で、すでに9月の終わりには、リーダー格のサウジアラビアが「価格維持政策を放棄して大幅な増産を検討している」との観測記事が出ていることも忘れるべきではない。

これまでOPECプラスは、生産を減少させて需給を引き締め、相場を押し上げるという方針を取ってきた。ところがOPECプラスに参加していないアメリカやカナダなどが生産を大幅に増やしているため、相場がなかなか上昇せず、減産していると、市場のシェアだけが相対的に低下するという問題が浮上してきたのである。

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