日本のゆるい職場で専門性獲得できる人の生き方 「石の上にも3年」戦略はもはや通用しない?
もう1つは、「モラトリアム最大化」戦略です。企業の都合で総合職を育てるために短期間で異動を繰り返し、適性のある分野を見つけるために短いジョブローテーションで育成する。こうした人事は、多くの会社で行われてきました。こうして、ある種、まわり道にまわり道を重ねてキャリアをつくっていくことが可能だったのです。
石の上にも三年戦略は、今でも場合によっては有効だと考えられますし、「今はこの環境で全力投球しよう」というキャリアデザインが現代でも可能なのは間違いありません(急速な成長過程にあるスタートアップ企業など)。ただ、質的負荷がかつてほど十分に獲得できない職場では、今いる環境でただじっとしているのでは、最低必要努力量の獲得に時間がかかり過ぎます。
またモラトリアム最大化戦略は、ライフキャリアにおける選択のタイミングが遅く、かつ少ない場合には、自身の可能性の探求をじっくりできるため有効な戦略です。しかし、キャリア選択のタイミングが増え、かつ早まった現代では、まわり道や寄り道ばかりしていては、早期に訪れるキャリア選択を、社会から求められる専門性や希少性を持たない状況、つまり「選択権がない」状態で行うことを強いられてしまうでしょう。
「寄り道と近道」をバランスさせる
そこで私が提案するのが、「寄り道と近道の働きかたのデザイン」です。最低必要努力量の早期獲得をめざしながら(近道)、偶発性も担保しておく(寄り道)。双方のバランスをとりながら、キャリアを充実させていく、という考えになります。
「寄り道」と「近道」の具体的な方針は、以下の4つの要素に分類できます。
②同時多発的につくる:キャリア・キャンペーン(近道)
③意味づける:センシング(近道)
④ずらしてつくる:コミットメントシフト(寄り道)
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