北海道新幹線、難航する「トンネル工事」の実態 軟弱地盤や巨大岩出現、地質に工法が合わない

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有島工区の工期は2025年3月で、11月時点の進捗率は59%だが、今年4月にシールドマシンが約2mの岩塊が出現して停止した。掘削箇所が地表から15mしかないこともあり、地上から掘削して岩を砕いて取り除くこととした。岩塊の撤去が完了し、11月18日、7カ月ぶりに掘削を再開したが、翌19日に1m程度の大きさの新たな岩塊が出現し、またもや掘削を停止してしまった。

JRTTに問い合わせたところ、「4月に岩盤に当たったときからこの岩盤の存在を想定していた」としたうえで、「撤去用の機材は残しておいた」という。同じく地上から掘った穴をから岩を砕く工法で岩塊を取り出す。そのため、「この撤去作業があっても全体のスケジュールに変更はない」。

とはいっても、このように次々と岩盤が出現すると、ルート上に弾性波探査では発見されなかった岩塊が存在するかもしれないという懸念は付きまとう。

弾性波探査をもっときめ細かく、たとえば数m間隔で行えば地盤の状況がずっと正確にわかるはずだが、それには「コストも時間もかかる」(JRTT)。渡島トンネルとは逆に、掘削の方法をSENSではなく硬い地盤に適したNATMに変更すれば問題なく掘削が可能となるが、やはりそこまでは考えていないという。

北海道新幹線 トンネル工事現場
各地で進む北海道新幹線のトンネル工事(編集部撮影)

見通せない工事の行方

報道陣からは、こうした状況を踏まえて開業時期はいつになるのかという質問が相次いだ。たとえば、渡島トンネルであれば、掘進が順調に進んだ場合の工事ペースはわかっており、現在の地質の不良区間をゆっくりと掘進する場合の工事ペースもわかっている。あとは、地質不良区間が何mあるかさえわかれば、ある程度の推定は可能だ。

しかし、国交省の担当者は、「会議でそうした話はあったが、今後の見通しにも関わってくることなので申し上げられない」と答えた。

倶知安駅
北海道新幹線の停車駅となる倶知安駅。沿線自治体などは開業の時期に注目する(編集部撮影)

このように土木工事の状況に不透明な部分が多いのでは、開業時期を示すのは簡単ではないだろう。駅周辺のインフラ整備を進める観点から、地元関係者の間では開業時期を決めてほしいという声が上がっている。それは確かにもっともなのだが、不確定要素が多い中で開業時期を示しても、信頼できる数字でなければ、かえって状況を混乱させることにもなりかねない。

ここは、ぐっとこらえて有識者会議が適切な結論を見出せるよう、議論の推移を見守るべきではないだろうか。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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