北海道新幹線、難航する「トンネル工事」の実態 軟弱地盤や巨大岩出現、地質に工法が合わない
札幌オリンピックが開催されるとしたらおそらく2030年1月から2月にかけてということになる。地元の間では、「新幹線開業をさらに1年前倒しして、オリンピックに間に合わせてはどうか」という威勢のいい声も上がった。
ところが、2020年10月に風向きが変わった。北陸新幹線・金沢―敦賀間の工事が計画よりおよそ1年半遅れており、2022年度末の開業には間に合わないことが明らかになったのだ。北陸新幹線の開業が遅れるなら、北海道新幹線は予定どおり開業できるのか。こんな背景から国は北海道新幹線・新函館北斗―札幌間の整備に関する有識者会議を立ち上げた。
会議を重ねるにつれ、北海道新幹線でも工事が遅れ、費用が膨らんでいる実態が明らかになってきた。工事を担う鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)は2024年5月、「2030年度末完成・開業の目標達成は極めて困難」と国に報告した。ただ、新たな開業時期については「現時点で具体的な時期を示すことは技術的に困難」としており、有識者会議で引き続き議論を行い、新たな開業時期を探ることになった。

軟弱地盤に「硬い地質向き」の工法
11月18日の会議では次のようなことが示された。新函館北斗―札幌間における土木工事の全長は211.9km。そのうち全長168.9kmあるトンネル工区における掘削の進捗率は11月1日時点で80%まで達している。40あるトンネル工区のうち18工区で掘削が終了している。ここだけ見れば順調に進んでいるように見えるが、一部のトンネル工区の掘削が難航している。
まず、新函館北斗駅と新八雲(仮称)駅の間に設けられる渡島トンネル(全長32.7km)だ。7つの工区に分かれており、村山工区(5.3km)のように掘削が完了したものもあるが、台場山工区(3.5km)と南鶉工区(3.9km)の掘削が遅れている。ほかの工区の進捗率が80〜100%であるのに対し、台場山工区は41%、南鶉工区は37%にとどまる。

両工区とも掘削の方法としては、硬い地盤の掘削に適しているNATM工法が用いられているが、台場山工区は細粒砂岩などのもろい地盤、南鶉工区は水に触れると膨張するような地盤に当たってしまった。
掘ること自体はできても、地盤が硬くないのでトンネル内面にコンクリートを吹き付ける前に崩れ落ちる危険がある。安全性を確保するため、地盤が崩れ落ちないように薬液注入などによって固めるといった追加的な補強工事をしながら慎重に工事を行っているため、掘削はゆっくりとしたペースでしか進まない。
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