「フィリピン大統領の暗殺を依頼」した副大統領 現職マルコス対前職ドゥテルテの全面対決へ
マルコス、ドゥテルテ両家の接近は2016年、ドゥテルテ氏がシニアの遺体をマニラ首都圏の英雄墓地に埋葬することを認めたことから始まった。
シニアは1989年に亡命先のアメリカ・ハワイ州で客死し、遺体はその後、故郷の北イロコス州に運ばれた。マルコス家は英雄墓地への埋葬を望んだが、戒厳令下で拷問などの人権侵害にあった被害者らが反対し、歴代政権は認めてこなかった。ところが、ドゥテルテ氏は大統領に就任直後に埋葬を認めた。
選挙共闘の蜜月は短期間で崩壊
2022年大統領選では、すべての世論調査で大統領候補のトップに立っていたサラ氏が副大統領選に回ったことでマルコス氏は圧勝した。いわば大統領の座を譲られた経緯から、マルコス氏はドゥテルテ陣営に配慮しながら政権運営を進めるとみられていた。
ところが実際には新政権が発足すると、さまざまな分野で前政権の政策は覆された。サラ氏は国防相兼務を希望したが、教育相に回された。外交・安全保障政策では、親中路線から親米路線に転換し、中国に対し南シナ海領有権問題で一歩も引かない立場を明確にした。
加えてマルコス陣営の番頭で、次期大統領の座を狙っているとされるロムアルデス議長率いる下院が副大統領府の要求した予算を削減したり、過去の予算執行に疑義を唱えてサラ氏を召喚したりしたことで、ドゥテルテ陣営が態度を硬化させてきた。
2024年1月には前大統領の次男で南部ミンダナオ島ダバオ市長のセバスチャン氏は、現政権はシニアの遺体を英雄墓地に埋葬するというマルコス家の悲願をかなえた前大統領(父)を牢獄に入れたがっていると憤り、「大統領、あなたは怠惰で国民への思いやりに欠ける。国を愛せないなら辞任すべきだ」と言い放った。
「牢獄に入れる」とは、前政権が進めた「麻薬撲滅戦争」で警察官らが司法手続きを経ずに多数の「容疑者」を殺害した超法規的殺人をめぐる捜査でドゥテルテ氏に刑罰が科されるという意味だ。
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