秋吉さん下重さん語る「歳を取る」と「今を生きる」 大変な時代を生きる若い人たちに伝えたいこと

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秋吉さん
秋吉 久美子(あきよし・くみこ)/女優。1954年生まれ。1972年、映画『旅の重さ』でデビュー後、『赤ちょうちん』『異人たちとの夏』『深い河』など出演作多数。早稲田大学政治経済学術院公共経営研究科修了(写真:新潮社)

秋吉 私、60代の頃は「初老のオンナ」とか言って、とぼけて楽しんでいたんですよね。でも、今は「老人新入生」になった感覚です。女性はやっぱり70歳になると、いい意味でも悪い意味でも、何かを手放した感じはしますね。

70になって、ズシンときた。整理整頓っていうんでしょうか、こざっぱりしたいという気持ちにはなってきてるんです。言い換えると、清潔感かしら?

生き方も、こざっぱりとさりげなく。洋服も上手にお洗濯して、自分自身が気持ちよく着られたらいい。みんな50、60代くらいになると焦ってくるんですよね。まだやりたいことが残っているとか、もう一度モテたいとか。

下重 私なんて80代になって初めて、本当に自分が望んでいた道が開け始めたんですよ。60代や70代で花開くのなんて、ごく当たり前のこと。ましてや、30代や40代なんて、まだまだつぼみの段階よ。

今の若い人たちは急ぎすぎてるんじゃないかな、もっと長い目で物事を見ることが大切だと思います。熟考してじっくり時間をかけてやったことはちゃんと自分に返ってくる。何年かかるかはわからないけれど、自分の意思を持ち続けなきゃ。まあ、これが大変なんですけどねえ……。

老いを見つめられるような強さを持ちたい

秋吉 私は、「うっかり芸能界に入ってしまったがゆえに、やれなかったこと」をやっていきたいと思っていて、今5つくらい教室に通ってるんです。哲学教室とか旧約聖書を英語で読む会とか、詩吟とか。1日が40時間くらいあったらいいのにって思ってます。

でも、それは、やりたいことがいっぱいあって、時間が足りないから1日40時間欲しいという意味じゃないんです。やっぱりいろいろ面倒くさいし、かったるいなあ……なんて感じるようなった。

以前は明け方まで本を読めましたけど、今では、夜になると目がショボショボしてくるし。だから、「40時間あれば、夜8時に本を読み出しても感覚的には夕方と一緒なのにな」なんて思ってしまうというわけ。

下重 なるほどね。私は仕事と遊び、2つともないとダメなの。歳を重ねるごとにお付き合いが増え、やりたいことも増えてきて、毎日あっという間に終わってしまう。

仕事は私にとって、姿勢を正してくれるもの。遊びは、自分を自由にしてくれるものなのね。この両輪がないと、生きていけない。仕事が忙しくてうまくいかないときは、一生懸命遊ぶ。

逆にプライベートでしんどいことがあれば、仕事に全力投球するの。それで両輪を保ってきたけど、ふと気づけば88歳になっていた。

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