「富士山登山鉄道」、山梨県がLRTに代わる新案構想 ゴムタイヤで道路を走る「電車のようなバス」

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技術課題調査検討結果をよく読むと、軌道や車両に関連する技術的事項について、委員が懸念する点をいくつも指摘しており、県の回答も「今後、検討する」といった歯切れの悪いものだった。また、富士山という急カーブ、急勾配を過酷な気象条件下で走行可能な車両の開発について車両メーカーが尻込みしている様子も読み取れた。

にもかかわらず、中間報告には、「上下分離方式による事業者側との適切なリスク管理が有効と考えられる」「事業化検討にあたり今後進めていくべき検討内容を次のとおり整理」といった文言が並び、県がLRT案で進めていくようにも読み取れた。反対派の住民たちからは、「結局、LRTありきではないか」「LRTの開発は技術的に不透明な要素が多いのにそれでも県は推進するのか」という批判の声が上がった。

EVバスは「来訪者のコントロール困難」

ただ、検討会の委員を務めた板谷和也・流通経済大学教授によれば、「今回は鉄軌道系の導入がそもそも可能かどうかを議論しているので、バス等のほかの交通機関との比較などは、その次の段階での検討になるということだったと記憶している」と振り返る。「つまり、鉄軌道系の導入は可能であるという今回の報告書の結論をもってそのまま鉄軌道系を導入するということにつながるわけではない」ということだ。この点については、県が住民に対してしっかりと説明すべきだったと思う。

LRT反対派の多くが、LRTに代わる交通手段として電気自動車(EV)バスを推す。LRT同様に環境負荷が軽減されるほか、LRT導入時に伴う大規模な工事の必要がなく整備費用が少なくて済むからだ。しかし、県はEVバスによるメリットは認めつつも、EVバスでは来訪者コントロールが難しいという点を課題に挙げていた。

ユネスコ世界遺産委員会の諮問機関であるイコモス(国際記念物遺跡会議)は、富士山について「人が多いため来訪者のコントロールが必要」と指摘している。

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