「富士山登山鉄道」、山梨県がLRTに代わる新案構想 ゴムタイヤで道路を走る「電車のようなバス」
EVバスでは一般車両を規制できないため、スバルラインにLRTの軌道を敷設して、緊急時を除きマイカーや大型バスが乗り入れないようにすることで来訪者コントロールを実現したいと県は考えている。長野県の上高地のようにマイカー規制と観光バス規制を行っている道路もあるが、「富士スバルラインは現行の法規制では現状以上の規制強化が難しい」というのが県の言い分だ。
LRTには技術的な課題が多く、EVバスでは来訪者コントロールができない。最適解はあるのか。県が探っているなかで新たに浮上したのが、ART(Autonomous Rail Rapid Transit)という新たな交通モードである。
その仕組みについては高木聡氏の2024年2月24日付記事(『LRTか、それともバスか?中国製「ART」とは何者か』)に詳しいが、一言で表せばLRTとバスの性格を併せ持つ交通手段。見かけはLRTだが、鉄輪で軌道上を走るのではなく、ゴムタイヤで道路上を走る。日本でもよく見かける連節バスがLRTの形をしているといえばわかりやすいだろうか。
今年9月24~27日にドイツ・ベルリンで開催された国際鉄道見本市「イノトランス」では、中国の鉄道車両メーカー中国中車(CRRC)のグループ会社が開発したARTが公開された。来訪者の関心はARTの隣に展示された最高時速200kmの水素燃料電池で走る高速列車に向いていたが、CRRCは都市と都市を結ぶ中・長距離の高速移動は水素列車、都市内移動はARTと二本立てで売りこんでいた。つまり、ARTは高速水素燃料電池列車並みのインパクトがあるとCRRCは踏んでいる。
ART、メーカー担当者が「太鼓判」
ARTは道路に設置した白線マーカーを車両の光学式センサーが検知して走行する。国内では地面にマーカーを埋没させてそれをセンサーが読み取って運行するという仕組みの自動運転BRT(バス高速輸送システム)の実証実験もすでに行われている。
マーカーの設置にLRTのような大がかりな工事は不要だ。しかも県によれば、マーカーに沿って走行するという点で軌道法の適用を受けるという。つまり、LRTと同様に扱われ、一般車両の通行を制限することができるのだ。また、道路上をゴムタイヤで走るという利点を生かせば、山中湖や河口湖など富士山麓周辺の観光地に延伸することも難しくなさそうだ。
ARTは中国やマレーシアなどの各都市で走行実績がある。富士山についてもCRRCの担当者が実際に現地を視察し、「導入は可能」と太鼓判を押したという。ただ、富士山に導入するARTをどのメーカーが製造するかは決まっていない。
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