徹底解説!トランプ政権下で「為替」はどう動くか 日本にとって一番の懸念は「自動車への追加関税」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

――トランプ政権下においては160円を突破するような円安に動くイメージなのか、今のような150円前後あたりなのか、あるいは投機的な取引が増えている話もありましたので、急速な巻き戻しで140円くらいまで一時的には円高にいくのか、予想レンジを教えてください。

今言われた数字は全部ありえて、この1年で全部踏むと思います。そうすると予想のレンジとしては広すぎるという話になるんですけども、でも現実にそうなんだから仕方がないというのが私の思っているところです。

今、日本の貿易赤字は縮小傾向にあって、経常収支は拡大傾向にあるので実需の円売りはあまりないわけです。トランプ政権下では金利が上がっていくはず、高止まりするはずだということで、投機的な円売りがどんどん積み上がっている。ですので、160円にいくときにはおそらく投機主導だと思います。

一方、投機主導で積み上がった円売りが巻き戻されたときに何が起こったか? 8月初頭に一気に141円台まで動いて、日経平均が大きく下がったわけですよね。

だから、これから140〜160円台ぐらいのレンジでの取り引きは全然あると思います。私は本(『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』)も出しているので、円安って言ったのに円高になったじゃないかとかって8月に言われてたんですけども、変動為替相場なので、そうなることは当然ある。

「140円を円高と呼びますか?」というのが私の問題提起なんです。これは130円になっても同じことを言うと思いますが、この円安自体は110円から始まっているわけで、110円から160円までいった円安をすべて日米金利差だけで説明するのはさすがに思考停止じゃないですかと思います。

なので、本来的には日本は今、外貨が取りにくくなっているという話を中心に、円相場のことを考えてあげたほうがいい。

日本はこの10年、円高を経験していない

——コロナ以前にあった100〜110円に戻るというのはありえないという見方でしょうか。

日本が貿易赤字の状態では難しいと思います。日本は円高で苦しんできた時代が長いので、為替マーケットの経験が長ければ長いほど「円高=悪いこと・怖いこと」という印象が色濃いと思うんです。

でもこの10年、日本経済は円高を経験していないですよ。円高になって社会がヒステリックになって、日銀が金融緩和で救いの手を入れるようなことが日本の歴史上何度も繰り返されてきましたけれども、この10年は見てないですよね。

では10年前の2012〜2013年ごろに何があったのか。そのころからアベノミクスが始まったので、その大規模金融緩和の余波で円高にならなくなったという考え方をする人たちもいます。

私はそうじゃないと思っています。統計を見れば、日本の貿易収支の黒字が趨勢的になくなったのがそのころです。だから、単に日本が外貨を稼げなくなったというタイミングで円高にならなくなったというだけの話だと私は思っていて、100円とか100円割れといった話は再び貿易黒字国に返り咲かないかぎりはないと思います。

動画内ではこのほかにも、「為替相場のサブシナリオ」「日本の金融・通貨政策への影響」「ユーロの動向」について聞いています。
野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事