壊れた心を取り戻せるのか――。
日常生活がままならなくなる「うつ病」で苦しむ人たちは、少なくない。厚生労働省の資料「第4回新たな地域医療構想等に関する検討会」を参照すると、日本国内の「精神疾患を有する総患者数」は令和2(2020)年度時点で約614.8万人に達したという。
NHKの連続テレビ小説『おむすび』で朝ドラ初出演を果たすなど、女優として活躍する兒玉遥さん(28)もかつて、深刻なうつ病で苦しんだ。
福岡県福岡市を拠点とするアイドルグループ・HKT48に、1期生として加入したのは2011年7月。15歳でのステージデビュー以降、グループ内では初代“Team H”のエースとして期待され、グループの顔となるシングル表題曲のセンターも託された。
しかし、2019年6月に22歳でグループを卒業するまで、うつ病によって2度の休業も経験。約8年のアイドル生活では、出番を待つステージ裏で「子どものように泣きじゃくるのも、日常茶飯事」だったと明かす。
*この記事の後編:「体重が20kgも増加して⋯」兒玉遥さん、うつの過酷すぎる体験
批判を浴びても「小鳥」が鳴いている感覚
HKT48で過ごした約8年のアイドル生活では、自身のメンタルを「ないがしろ」にしていたという。
当時の経験によって「自分が弱ると、周囲にも迷惑をかけてしまう」と悟った兒玉さんは今、第一に「自分の心を守ろう」と意識している。
たとえば、アイドル時代には批判的な目を向けるファン“アンチ”からの声も浴びた。
しかし、今では「心ない言葉を見ても、小鳥がピヨピヨッと鳴いている程度にしか思いません」と達観。「態度を改めてくれるかと期待しても仕方ないので、私はただ、やりたいことをまっすぐにやっています」と笑う。
インタビューで「他人のものさしで自分を評価するのではなく、自分がいかに満足するかを大事にしたら生きやすくなった」と真剣に述べる兒玉さんの視線は鋭く、強い。
しかし、過去にはその目の輝きが、失われるほどに追い込まれていた。
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