ロシアが勝利すれば、中国はとくにインド太平洋でより強硬な態度を示す可能性があり、これは台湾だけでなく南シナ海で潜在的な導火線となり、緊張が高まる可能性がある。
南北朝鮮ともに、アメリカや中国との安全保障条約に縛られているため、インド太平洋の不安定性は必然的に朝鮮半島につながるしかない。
――北朝鮮軍の派兵で中朝関係が硬直したように見える。
外交的な観点から見ると、金総書記は中国だけでなく、アメリカと韓国にもシグナルを送っている。
派兵はアメリカと韓国向けのシグナルだ
最近の中朝関係の明らかな冷え込みの兆候は、北朝鮮によって始まったと思われる。とくに北朝鮮の場合、対外経済の依存度において中国が98%に達する状況で、金総書記は中国と距離を置くことで、北朝鮮内政に対する中国の干渉を減らそうとしているようだ。
ロシアとの関係を強化することで他の戦略的選択肢があることを示し、中国に対する影響力を高めようとする目的もある。
中国が現在、インド太平洋地域の安定が望ましいと考えていることを知っている金総書記は、少なくとも核実験に関しては「賢い行動」で中国と金銭的対価を交換することができるだろう。
――北朝鮮の兵士派遣が、韓国やアメリカに与えるメッセージは何か。
北朝鮮とロシア間の「包括的なパートナーシップ」という表現は意図的に曖昧であり、北朝鮮が攻撃された時の自動軍事支援に対する明示的な約束はない。このような曖昧さのおかげで、両国は戦略的態勢を取ることができ、拘束力のある義務ではなく、柔軟な選択権を持つことになる。
朝鮮半島で紛争が発生した場合、北朝鮮が軍隊を派遣した見返りにロシアも自国の軍隊を派遣する可能性があるが、その可能性は不確実だ。
北朝鮮とロシアは、アメリカがどこまで我慢できるかを試している可能性がある。アメリカが拡大を自制すれば、欧米の決意が弱まったと認識し、そのため金総書記はより大胆な行動に移す可能性がある。
――ロシアが派兵と引き換えに先端技術を北朝鮮に渡すのでは。
歴史的に、ロシアはイランや北朝鮮のような予測不可能な政権と危険な技術を共有することを控えてきた。冷戦時代、ソ連は北朝鮮に最初の研究用原子炉を提供したが、ソ連は衛星国に対して平和目的の核技術は提供したものの、北朝鮮にはそういったものにアクセスできないようにした。