アストンマーティン「今さら12気筒」開発の真意 835psの超パワーで「ヴァンキッシュ」に搭載

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ヴァンキッシュの新しい12気筒エンジンも排気量は同じだが、部品を可能なかぎり適正化し、ターボチャージャーも刷新。パワーと燃費をともに追求した「まったくの別もの」(オウェン氏)だという。

運転席まわりの操作類はだいぶ整理されている(写真:Aston Martin Lagonda)
運転席まわりの操作類はだいぶ整理されている(写真:Aston Martin Lagonda)

「今回の12気筒エンジンは、ヴァンキッシュ専用です。ヴァンキッシュは私たちが手がけるGTの頂点に位置するモデルですから、その下にくるモデルに同じ12気筒を搭載する予定はありません」

ロング氏は、きっぱりと断言するような口調で言う。ヴァンキッシュにヴォランテ(オープンモデル)が追加されるとしたら、それが2番目のモデルになり、それ以外はないかもしれない。

アストンマーティンの“いま”の集大成

「できるかぎり作っていきたい」とオウェン氏が言う、新しい12気筒。ベースは、DBS に搭載された同排気量のAE31型だが、徹底的に手を入れられている。具体例にあげると以下となる。

■シリンダーブロックとコンロッドの強化
■シリンダーヘッドの再設計
■専用のプロファイルをもったカムシャフト
■インテークとエグゾーストのポートを再設計
■スパークプラグ位置の見直し
■インジェクターの高性能化

加えて2基のターボチャージャーは、以前より15%、回転速度が上がっているそうだ。さらにタービンの慣性を抑えることで、アクセルペダルを踏み込んだときのスロットルレスポンスが向上したという。「トップクラスの性能と燃焼効率を実現」と、アストンマーティンの資料には記される。

「このエンジンでは、排ガス規制への対応と燃費も、同時にもっとも重要なテーマだった」とオウェン氏。

アストンマーティンのエンジニアは、さらにもうひとつ、「ブーストリザーブ」という機能を採用した。瞬間的に加速がほしいとき、ぱっとアクセルペダルを踏むと、待機モードに入っていたターボチャージャーがすかさず回ってエンジンに熱いガスを送り込み、ターボがフル回転したようなパワーが得られるシステムだ。

「といっても……」と、オウェン氏は付け加える。

「ヴァンキッシュ」は2プラス2でなく純粋な2シーターになった(写真:Aston Martin Lagonda)
「ヴァンキッシュ」は2プラス2でなく純粋な2シーターになった(写真:Aston Martin Lagonda)

「ヴァンキッシュはトップモデルですが、その本質は111周年を迎える私たちがずっと手がけてきたGTです。ドライバーはクルマに振り回されずに、長距離を長時間ドライブしても快適でいられることを念頭に置いてきました」

「ヴァンキッシュはトップモデルですが、その本質は111周年を迎える私たちがずっと手がけてきたGTです。ドライバーはクルマに振り回されずに、長距離を長時間ドライブしても快適でいられることを念頭に置いてきました」

冒頭でかかげた「いま12気筒エンジンを新開発したことに、どんな思惑があるのだろう」に対する答えは、明確だった。V型12気筒エンジンは、“お客様の声”であり、アストンマーティンのアイコンなのだ。

それが“いつまで作られるか”はわからないが、いまこの時期にV型12気筒エンジンをあらたに手がけた“勇気”には感心させられた

【写真】アストンマーティンの伝統的スタイルで登場したヴァンキッシュ(40枚以上)
小川 フミオ モータージャーナリスト

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おがわ ふみお / Fumio Ogawa

慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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