アストンマーティン「今さら12気筒」開発の真意 835psの超パワーで「ヴァンキッシュ」に搭載
さらに「今回、新たに12気筒を開発しようと思ったのは、顧客の声を聞いたからです」と、オウェン氏の発言に言葉を添えるのは、ディレクター・オブ・ストラテジー&プロダクトのアレックス・ロング氏だ。
「アストンマーティンではハイパースポーツカーも開発していますが、方針はあくまでも今回のヴァンキッシュのような“エンジンを搭載するGT(グランツーリスモ)”を、可能なかぎり作り続けることです」
この先「パワートレインが電動化に向かうのは避けられない」とロング氏も認める。しかし、アストンマーティンの顧客は、やはりエンジンを求める。
「これからの市場のトレンドは、電動化になるでしょう。しかし、ウルトラ・ラグジュアリーやウルトラ・ハイパフォーマンスといったカテゴリーでは、顧客のニーズは反対方向に動いています。COVID19がひとまずの落ち着きを見せ、かつての世界が戻ってきたのです。V8のクルマに乗りたい、V12エンジンを堪能したいという顧客の声が、数多く寄せられるようになったのです」
12気筒の良さはどこにあるのか?
パワーの点でいえば、SUVの「DBX 707」に搭載されているV6のプラグインハイブリッド(PHEV)でも、十分なものが手に入る。でも、趣味のクルマの世界では、実用性は常に先にはこないものだ。
「アストンマーティンといえば12気筒だと、捉えている顧客も少なくありません。私たちに、“さらなる12気筒搭載モデルを開発してほしい”という要望も多くありました。もちろん、イメージだけで言われているのではありません。12気筒には、ぶ厚いトルクとともに、各気筒の点火時期に起因する、魅力的な音とバイブレーションがあって、“これがなくては!”という方も大勢います」
新たな12気筒エンジンの開発にあたりオウェン氏は、「アタマを使って設計したのは間違いありませんが、何よりも必要だったのは“熱い心”でした」と言う。
アストンマーティンで直近の12気筒エンジンは、2024年に生産終了した「DBS」の5.2リッターだ。
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