京都のお茶屋が受け継ぐ「究極のキャッシュレス」 「一見さんお断り」にも合理的な理由がある
工場での機械化が進んでいます。WEBショップはもちろん、お洒落でモダンな直営店舗では、さまざまな体験プログラムが用意され、京都本店併設の薫習館(くんじゅうかん)という体感施設には、修学旅行生たちもたくさん訪れます。最近では、お香の入った「ガチャガチャ」まで置いてあって、若い子たちに人気です。
お店は、日本だけにとどまらず、平成2年には早々にアメリカ法人を設立し、海外進出! っていうか、なんと、明治30年には、それまでの伝統的な香に加え、技術の粋を結集して、諸外国の生活様式にもふさわしい「香水香(こうすいこう)」を開発し、日本初のアメリカへの輸出に成功したというから、驚きです。
何にお金を使わなければいけないのか、という「問い」
そんな松栄堂さんは、どんな特徴的なお金の使い方をしているのでしょう? それは「投資」です。
松栄堂さんの経営理念は、「変わらないために変わり続ける」となっています。薫香類の製造から販売までをこれからも続けるために、常に果敢に挑み続けるとも。
松栄堂12代目社長である畑正高さんは、大学卒業後に1年間イギリスへ行ったのち、すぐに松栄堂の香房現場に入り、製造から始めました。
畑さんが現場に出たときは、50代の2人の社員と耳の不自由な40代の先輩と工場には4人だったそうです。そのときの危機感が、「この先輩たちが元気な間に、機械化をすすめ、彼らが認める製品をつくれるようにしないと!」という考えでした。
このような現場では、技術を継承できる若い人たちを多く採用するのは難しいと考えたからです。あとから振り返れば、ここが松栄堂さんにとって、1つのターニングポイントだったことは間違いありません。ポイントは3つです。
1つめのポイントは、収益を上げるために投資(お金を使うこと)が必要だと理解していたことです。
2つめは、お金の使い方を誤らなかったこと。
この時代、職人技をオートメーション化するなんて、現実的ではなかったはずです。ごく平凡な頭で、「生産性アップのための投資は何か?」と考えたら、せいぜい香房をきれいにするとか、給与をアップして、職人の数を増やすとか、そんなことにお金を使おうと考えそうです。
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