トランプ返り咲きで金や原油価格はどうなるのか 長期金利は一段と上昇する懸念が出てきた

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一方、エネルギー市場への影響は、かなり長期的な視点に立って見る必要がありそうだ。

この分野では、トランプ氏が化石燃料などのエネルギー開発分野での規制緩和を進める意向を示すいっぽう、ハリス氏はクリーンエネルギーへの移行加速を後押しする姿勢を示していた。いずれにせよ政策の変更が実際の需給に影響を及ぼすようになるまでには、数年単位の長い年月を要することに変わりはない。

典型的なのは石油だ。トランプ政権が発足すれば、アメリカ国内の石油開発に関する規制が緩和され、同国の石油生産が増加する可能性は高そうだ。ただ実際に開発が承認され、生産が増加を始めるまでには7年から10年の期間が必要となりそうだ。

一方、アメリカ国内の天然ガス市場や液化天然ガス(LNG)の国際市場への影響は、比較的に短期に表れてくるかもしれない。トランプ氏は1期目にもLNG施設の新規建設に関しての規制緩和を進め、それを受けてLNG施設の建設が進んだことは記憶に新しい。

今回も同様にLNG施設の建設や規模拡張が進められるなら、アメリカのLNG輸出が一段と伸びてくることになる。これは、アメリカ国内の天然ガス市場にとっては強気、国際LNG市場にとっては弱気の影響をもたらすことになりそうだ。

さらに、エネルギー市場を考える際には、地政学リスクの高まりにも十分な注意が必要だ。トランプ氏がイスラエルへの支持を明確に示していること考えれば、今回の選挙結果を受けてイスラエルのネタニヤフ政権が、より強硬な方針を打ち出してくる可能性が高いと考える。

もちろんそれは、ハマスやヒズボラといったイスラム組織への攻撃強化であり、中東情勢が一段と緊迫するのは避けられないだろう。折しもイランは、最高指導者であるハメネイ師の意向もあって、イスラエルに新たな報復攻撃を行うことを警告している。

実際にイランがイスラエルを攻撃すれば、アメリカの強力な後ろ盾を得たイスラエルがさらに激しい反撃に転じる可能性は、高いと見ておいたほうがよさそうだ。そうした「報復の連鎖」によって状況が一段と悪化、最終的にイランがペルシャ湾の入口にあるホルムズ海峡を閉鎖するような事態に陥れば、供給不安が大きく強まる中で相場は急伸するのは避けられなくなるだろう。

もし、そこまでの事態に至らなくとも、イスラエルによるイランの石油施設への攻撃によって、同国の生産が減少する可能性は十分あるし、アメリカがイランへの制裁を強化することで、結果的に石油生産が落ち込むこともありうると、みておいたほうがよいと思われる。

対中貿易で強硬姿勢なら、中国が報復するリスクも?

もう1つ、対中政策についても考えておきたい。中国に対して60%を超える関税を掛けると息巻いていたトランプ氏が勝利したことで、今後両国の関係が悪化する恐れはかなり高そうだ。報復として、中国がアメリカの農産物に対して高関税をかける、あるいはアメリカからの輸入を制限するなどの報復措置を取る可能性も極めて高く、大豆やコーンなどの商品市場にとっては、大きな売り材料となりそうだ。

もっとも、トランプ氏は、最初のうちは極めて威勢が良くても、反撃などを受ければ意外に「あっさりと妥協に応じてしまうことが多いことも、1期目を見ていれば明らかだ。中国もそのあたりは重々承知しており、むしろ民主党政権よりも扱いやすいと考えているかもしれない。

さらに、当初は強硬な政策を打ち出したからといって、それをそのまま実現させるとは限らない。1期目の交渉の際には、アメリカ側が大幅に譲歩するいっぽうで、中国が農産物をはじめとしたアメリカの商品の大量買い付けを保証するという形で妥協が成立していたことも、頭に入れておいたほうがよいだろう。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

松本 英毅 NY在住コモディティトレーダー

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まつもと えいき / Eiki Matsumoto

1963年生まれ。音楽家活動のあとアメリカでコモディティートレードの専門家として活動。2004年にコメンテーターとしての活動を開始。現在、「よそうかい.com」代表取締役としてプロ投資家を対象に情報発信中。NYを拠点にアメリカ市場を幅広くウォッチ、原油を中心としたコモディティー市場全般に対する造詣が深い。毎日NY市場が開く前に配信されるデイリーストラテジーレポートでは、推奨トレードのシミュレーションが好結果を残しており、2018年にはそれを基にした商品ファンドを立ち上げ、自らも運用に当たる。ツイッター (@yosoukai) のほか、YouTubeチャンネルでも毎日精力的に情報を配信している。

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