「定年後の友達いないおじさん」問題、解決への道 平均年齢76歳「仲良しグループ」の事例に学ぶ

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巷間言われる「昔は〇〇社の部長で~」なんて自慢げな話はやはり、定年後の人間関係づくりにはご法度のようだ。

他のメンバーも渡辺さんと同意見で、「みんなが自分の意思で来る場所ですから、『俺が顔だ』というような上から目線や、人の話を聞かなかったり場を仕切ろうとしたりする人はダメですよね」と中澤さんも話す。

佐藤さんによれば、メンバーの関係性は「若い時の友人とは違って、気遣いをし合いながらの友達関係」なんだそう。

例えば先生役の馬場さんは、「できる人に合わせない」ことを意識している。

それぞれができることから始めて、飽きないように少しずつ難度を上げ、さらに、見栄えがよく、楽しめる手品を選ぶ工夫をしているのだという。その気遣いを、他のメンバーたちも「ちゃんと考えてくれている」と感じ取るのだ。

世の中に恩返しをしたいという思い

その馬場さんは、「共通の目的を持って活動できるか。それが大事なんじゃないかと思います」と話す。

手品をとことん楽しむことと、もう一つ大切なのは「やりがい」だ。

手品の習得だけが目的なら、多分飽きてしまっただろうと全員が口をそろえる。

「サラリーマン生活を終えてから、世の中に恩返しをしたいという思いがどこかでありました。イベントで手品を披露して高齢者の方たちに喜んでもらえると、逆に僕たちもうれしくなるんですよ。

だから、もっと楽しんで元気になってもらおうって、やる気が出るんです」(中澤さん)

共通の思いと目的があれば、そこには昔の肩書も上下関係も、エゴも無用。自然に仲良くなるだけなのかもしれない。

12月のイベントに向け、練習を重ねる「てじなーず」。目下、新メンバーを募集中だ。

佐藤さんは、「今」をこう話して笑う。

「本当にいい仲間と出会えましたし、人生を楽しんでいますよ。人それぞれ個性があるから、高齢者が絶対に友達作りをしなきゃいけないとは思いません。でも、楽しいことがあるかもしれないから、思い切って外に出てみてもいいんじゃないかな」

そんな軽い気持ちを持つことが、定年後の「友達いない問題」を解決する一歩なのかもしれない。

(AERAdot.記者・國府田英之)

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