「定年後の友達いないおじさん」問題、解決への道 平均年齢76歳「仲良しグループ」の事例に学ぶ
メンバーで、「先生役」を務めるのが、手品歴二十数年の馬場幸男さん(76)。前述のイベントでトリを務めて拍手喝采を浴びていた男性だ。
それと渡辺淳三さん(80)、中澤宏文さん(68)、佐藤基行さん(80)、内山洋さん(74)の「ど素人」4人を含めた5人組である。
平均年齢は75.6歳……とハイアベレージだ。
年の差があっても「ほぼタメ口」
別のサロンで顔見知りだったメンバーもいれば、「てじなーず」で初めて会った同士もいる。
月一回、全体で集まる練習で馬場さんから手ほどきを受けるほか、メンバー同士で声をかけあって自主練習にも励み、福祉施設などでのイベントに備えるという。
未経験者への敷居を低くするため、手品の道具にはなるべくお金をかけない。100円ショップで材料を買ったり、自作した道具も使う。
「部屋が手品の道具だらけになっちゃったよ」と渡辺さんがげらげら笑えば、佐藤さんも「素人なのに無鉄砲と言うか、自分でもよくやってるなって思うよなあ」と笑い返す。
最年長と最年少は一回り違うが、その会話はほとんど「ため口」に近く、長年の友人のような雰囲気だ。筆者にもうれしそうに手品を披露してくるし、とにかく楽しそうだ。
だが、ここにいる全員が、もともと人付き合いに積極的だったわけではない。
佐藤さんは、どちらかと言えばそうではなかった1人だ。
会社を定年退職後、資格を生かし独立して仕事をしていた佐藤さんだが、2018年、74歳の時に前立腺がんが見つかった。
「医師から(余命は)3年から5年くらいと言われて、さすがにショックを受けました。仕事も辞めてね。いつも病気のことが頭から離れなくて、抗がん剤の副作用もつらくて、ウジウジした気持ちで過ごしていました」と振り返る。