障害者マーケットは日本のビジネスチャンスだ 世界では18.5億人、13兆ドルの市場が眠っている
この市場の価値を十分に理解している代表的な企業としてアップルが挙げられます。iPhoneにスクリーンリーダーの機能(VoiceOver)があるのをご存じでしょうか。電子書籍やネットニュース、企業の公式サイトなど、画面に映し出されている文章を音声で読み上げる、視覚障害者に必要な機能です。同様のアプリケーションソフトは他にもありますが、最初からOSに組み込まれている点にアップルの意識の高さを感じます。
このVoiceOverを開発したチームメンバーの一人に、視覚障害者のディーン・ハドソンさんがいます。彼がコンピュータサイエンスを学んだ学生時代には、アップルのVoiceOverも、その他の音声読み上げソフトも、まだ存在しなかったため、画面に表示されるコードを読む介助者が不可欠でした。
それでも、エンジニアになってアップルに入社した彼は、VoiceOverをはじめとするアクセシビリティ機能の開発に携わり、さまざまな障害のある人がデバイスを利用して自立した生活を送る後押しをしています。アップルはアクセシビリティに正面から取り組むことで、優秀な人材と魅力的な市場の両方を獲得したことになります。
VoiceOverの他にも、アップルは補聴器や拡大鏡の代わりになるものなど、実に多くのアクセシビリティ機能をOSに取り入れています。これらは単にマーケティングや販売のためではなく、企業文化に根差したものといえるでしょう。
アクセシビリティの確保が生き残りの条件となる
日本には以前、障害者向けにパソコンや周辺機器の販売、コンサルティングを行うアップルのグループ会社、アップルディスアビリティセンターがありました。設立は1994年で、それだけでも十分に時代を先取りしているのですが、障害者対応は全社を挙げて取り組むべきという理由で本体に吸収されたことにも驚かされます。
デジタルツールは障害者にとって非常に相性の良いものです。健常者にとって便利なツールやシステムの多くは、健常者以上に障害者をサポートします。実際、アップル以外のマイクロソフトやグーグルなどのテック企業も、アクセシビリティ機能の開発に熱心です。彼らの大口顧客であるアメリカ政府が、アクセシブルなテクノロジーしか購入しないと定めていることも影響しているでしょう。日本でも、いずれは同様の公共調達の要件ができることも考えられます。
このように、テック企業はもちろん、デジタルテクノロジーを何らかの形で取り入れた製品やサービスを提供する企業(つまり、現代におけるほとんどの企業)にとって、アクセシビリティの確保は、生き残りのための必須要件となっています。
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