5度のがんを克服した男性「高額な治療は不要」 自由診療クリニックで味わった「苦い経験」

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会計のとき、点滴と私の症状に合わせて調合されたという1か月分の漢方薬で合計10万円を請求され、耳を疑ったのを覚えています。高額で、なぜかピッタリ10万円。診療明細も何もないため内訳は分かりません。

このとき、治療内容も治療費の金額も、院長が患者の足元と懐具合を見て適当に決めていると確信し、そのクリニックでの治療はやめました。

あとで調べてみると、高濃度ビタミンC点滴は自由診療のクリニックの金儲けに使われる常套手段のようでした。高くつきましたが、いい勉強になりました。

ちなみに治療費についての参考として書きますが、私は脳腫瘍の治療では標準治療としてがんの三大治療を2か月で全て受け、全部が保険診療で、自己負担額は合計で十数万円でした。最先端の術中MRIを使った手術も含まれています。つまりこの手術も保険診療の範囲内です。だから健康保険と高額療養費制度の恩恵を受けることができて、自己負担額は予想を大幅に下回りました。会計のときに、漢方専門クリニックとは別の意味で「間違いではないか」と思ったほどです。

「標準治療」こそが「最高」の治療

私は脳腫瘍以外の4つのがんも、全て手術、放射線治療、抗がん剤治療のいずれかもしくは組み合わせによる標準治療を受けています。がんを治すのに最も効果が高く副作用も少ないのが標準治療です。

世界中の病院で数多くの患者を対象とした臨床試験を通じて、その有効性と安全性が確認され、世界中の病院で提供されているのが「標準治療」です。

CVカテーテル
白血病の治療時に首にCVカテーテルを挿入(写真:高山さん提供)

「標準」という名前を見ると、もっと「上級」の治療があるように感じるかもしれません。お金持ちやセレブだけが受けることのできる「上級治療」が秘密裏に提供されているのではないか、と。

でもそんなものは存在しません。実際は「標準治療」こそが世界で「最高」「最善」の治療です。がんを治すのに最も確実で安全な道なのです。

有名な話ですが、アップル創業者のスティーブ・ジョブズは膵臓がんが見つかったとき、病院での手術を拒絶し、代替療法(民間療法)に頼りました。しかし徐々に健康状態は悪化し、最終的には手術を受けることになります。本人はこの選択を後悔し、もっと早く手術を受けるべきだったと語っていたそうです。

病院での治療を拒絶しても、がんが消える秘策などどこにもありません。がんという現実、そして標準治療が最善の治療だという科学的事実をしっかり受け入れて、病院での治療に臨むことが大切だと思います。現実から目を逸らさずに、覚悟を決めて、標準治療でがんを治療していきましょう。

5度のがんを生き延びる技術 がん闘病はメンタルが9割
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高山 知朗 オーシャンブリッジ ファウンダー

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たかやま のりあき / Noriaki Takayama

1971年、長野県生まれ。早稲田大学卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て、2001年にITベンチャー企業の株式会社オーシャンブリッジを設立。11年に脳腫瘍(グリオーマ)摘出手術を受ける。13年に悪性リンパ腫を発症。抗がん剤治療を受け寛解に至るが、体力面の不安から17年に会社をM&Aで売却。直後に急性骨髄性白血病を発症し、臍帯血移植を受けて寛解に至る。20年に大腸がん、24年に肺がんの手術を受け、現在は自宅で元気に暮らす。闘病ブログががん患者から絶大な人気を誇る。著書に『5度のがんを生き延びる技術 がん闘病はメンタルが9割』『治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ』(ともに幻冬舎)。

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